第四十六話
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くれた方なんですって……おかしいでしょう?」
くすくす笑ってディアドラさんはそう言った。
俺の話はあまり信じてないのだろうか? いや、それならこんな席など設けられないはずだし……
「でも、誰にも見せたり知らせたりもしないことを何もかも言い当てられてしまうと、そうなのかもしれないと思ってみたりも……」
「お前の周りをあらかじめ調べていたのかも知れないのだよ?」
「この森に、特にそんな意図で入ってくるような人がいたら森が迷わせてしまいますし、それにお父様のような立場の方でさえ、私の事を御存じなかったでしょう?」
「……そう………だね」
「こうしてお父様と引き合わせてくださったのです、感謝しています」
ディアドラさんは俺の味方だな。
クルト王子のほうも味方に出来れば万々歳なんだが。
「今まで親らしいことを何も出来ずにすまなかった。 勝手な言い草だが許してもらえたら嬉しい」
「許すも何も……それに、母さまがお父様に黙って居なくなってしまったことを謝りたいと言ってますよ」
目を瞑って胸の前で軽く組んだディアドラさんはそう告げた。
「ところでお父様、眠りはどれくらいの時間が続くのでしょう?」
「その時によって違うが、まだまだしばらくはそのままだろうね」
「では、お風邪でも召さないとも限りませんから、何か上に掛ける物をお持ちします」
「手伝おう」
そう言って二人は立ちあがり……ディアドラさんの背後に立ったクルト王太子は素早く傍らの杖を持ち、彼女を眠りの世界へと送った。
「許せ。 これもお前を守るためだ」
ディアドラさんを椅子に座らせると彼は真剣な面持ちで何やら書きものを始め出し、それを終えると懐から書状を三通取りだしたが、そのうち一つには火をつけて燃やし尽くした……
残ったほうの書状のうち一通をディアドラさんの前に置くと、彼は懐から短刀を取り出した。
さすがにこれは……自ら命でも断つ気では無かろうか?
俺は寝たふりをやめて、クルト王太子に飛びかかった……
「な、っ、ミュアハ王子!」
「早まった真似はおやめください!」
「ち、違う、違うのだっ!」
「いいえ!ディアドラ様の出生の秘密を守る為、自ら命を断ってはなりません! 他の者がいくらシギュン様とあなた様の間の子だと主張したところであなた様がこの世の者で無くなれば誰も確かめようがなく、あの書状は自分の母親の名は伏せておけとでも記してあったとお見受けした」
簡単に馬乗りになり両手を押さえることが出来たが、彼の方は抵抗するようなそぶりも見せずわずかに入れていた力も抜いてしまっていた。
「安心しましたよミュアハ王子」
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