第二話
[1/7]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
無意識のうちに身体を強化していたらしく怪我を負うことはなかった。
窪地のような場所に落ちたため、それ以上の落下を防げたのは幸いだ。
ただ、この体勢は少し厳しいが――。
「……」
「……」
滑り落ちた衝撃から、俺たちは互いに抱き合ったような姿勢でいる。女性が上で俺が下の体勢だ。
ガスマスクをつけているため目と目が合うことはないんだが、なぜか先ほどから互いに目が合わさり視線が外せない。
――しかし、改めて見るとすごい美人だなー……。
整った顔立ちに薄い茶色の瞳、この地域では珍しい白い肌。目の前にいる女性は今まで見てきた女の人の中で間違いなく群を抜くほどの美貌を持っていた。
しかし、ずっとこの姿勢でいるわけにはいかない。シャイな俺はとって心臓にとても悪いのだ。
「……あの、どいてもらえるかな?」
「――ハッ、も、申し訳ございません!」
正気に戻った様子の女性は慌てて俺の上から身体を退かした。外人の彼女から発せられた流暢な日本語に驚きながらも身体を起こす。
女性は斜面の様子を見ていた。銃声はすでに止み、先程までの緊迫した空気はなくなり、シンとした静けさが戻っている。
ホッとしたのか、改めて俺に向き直った。
「もう敵はおりません。撤退したようです」
「そうなの?」
「はい。ご安心下さい、危険は排除しました。災難に遭われたようですが心配いりません」
「そう、ありがと」
「え……?」
そう言うと、なぜか女性の顔が朱に染まった。
「ん? 俺の身を案じてくれたんだよね?」
「そんな……当然のことです。過分なお言葉、勿体のうございます」
彼女は赤面しながら近寄ってきた。
「どこかお怪我はございませんか? あるようでしたら仰って下さい。すぐに手当いたします」
「ああ、大丈夫だよ。どこも問題はないさ」
「ですが、万が一ということもあります」
「大丈夫大丈夫。自分のことは自分が一番わかっているから。怪我も捻挫もないよ」
「ですが……」
どうやらなにがなんでも調べたいらしい。見た目に反して意外と強情な様子をみせる彼女に溜め息をつき、仕方なく自由にさせることにした。
「失礼します」
腕を取るとさするように手を動かしていった。関節を捻っていないか確かめているのだろう。
「……特に熱感も痛みもないので大丈夫ですね」
「ね? だから言ったでしょ、大丈夫だって」
「はい、出過ぎた真似をいたしました。申し訳ございません」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ