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ファイアーエムブレム〜ユグドラル動乱時代に転生〜
第四十五話
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、よいでしょうか」
後から彼女はこう言った、何か予感がしたのだと……





 森の中をどのくらい歩いたことだろう、獣道のようにはなってはいなくともディアドラが歩くと彼女の行く手を遮る邪魔な枝や下生えは自然と道を譲るという不思議な光景を目にすることになった。
開けた場所に出たが草が生い茂り、建物はあっても草や蔦、それに木々に埋もれたものばかりだ。

「ここに、たった一人で………」

俺が思わず独りごとをつぶやいてしまうと、ディアドラは足を止めて胸の前で手を組み

「こうすると……感じるんです。みんなの心を……」

真似てみたがしーんと静まり返った森の静けさとそよぐ風、時には小鳥のさえずりくらいしか感じ取ることは出来なかった。

「どうやら、不心得者のわたしにはみなさんが語りかけてくださらないようです」
「そんな事はありませんよ。 ミュアハさんのこと、歓迎してくれていますよ」

苦笑した俺にディアドラさんはにこっとそう答えてくれた。
若干遅れてクルト王子が追いついてきたので

「では、狭いですが私の住まいはこちらです。お父様はもっと足腰を鍛えてくださらないと」
「そうだねぇ、ハァ、少し、ハァ。そういうことも考えないとね」
「ふふふ」
「恐れ入りますがディアドラ様、お住まいの前に……」
「どうされました?」
「お母君の眠られているところへ、王太子殿下を……」
「……ありがとう。 ミュアハ王子」

俺たちはこの集落の人たちが眠っている墓地へと案内してもらった。
石を積んだもの、木で造られた墓標、土を積み上げただけのものと様々な形式のものがあった。
このあたりは集落のかつて居住エリアだった場所よりは雑草が抜かれたりなど人の手が入った跡がある。
全て彼女によるものだろう……声が聞こえるみたいな事は言っていたが、たった一人で、つらく大変なものではないだろうか。
彼女が指し示したシギュンさんの墓の前で、皆、目を瞑り祈りを捧げた。
俺は先日までの名目上の活動の為にエッダ教の経文を多少なりとも手ほどきされていたので、拙いながらもそれを唱えた。

「ありがとう。 ミュアハさん」
「とんでもない、きちんとしたものじゃ無いので、眠っているお母君のお心を害していなければ良いのですが……」
「気持ち、それが大事なんですって……」
「……王太子殿下には、シギュン様と少し二人きりになっていただきましょうか。……他の方々にもお祈りしてもよろしいでしょうか?」
「是非、お願いします」

俺とディアドラさんはクルト王子をその場に残して他のお墓にもお参りを行いながら、彼が俺たちに合流するのを待っていた。
やがてこちらにやってきた彼が述べた感謝の言葉は、いつもより飾らないものに感じた。




 
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