五 狐の道化 後編
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
尤も安全な処と言われている。
しかし人を信用も信頼もできぬ子どもにとっては、地獄そのもの。
火影は暗部任務を淡々とこなす子どもがいつも独りだと知っている。別の暗部と共闘する際も必要以上に距離を置き、常に単独を好む。
そんな子どもが嘆かわしいと感じたため、今回このようなこじつけの任務を与えたのだ。友人、せめて己以外の理解者を子どもに持ってほしいという切実な思い故である。
「……何を期待してるか知らないけど」
火影の真意を察した子どもは抑揚の無い声で、しかしはっきりと言い切った。
「じっちゃんの望みは叶わないと思うよ」
断言する子どもの姿に胸が張り裂けそうになりながらも、火影は命令を下す。
「…もう一度言う。うずまきナルトは忍者を目指しアカデミーに入学すること…火影の命じゃ」
「…………………御意」
承諾を返した聡明な子どもはもう一度窓の外を一瞥すると、至極面倒だと目を伏せた。
傍から見れば狐と狸の探り合いである。しかし、横島は子どもの心情がまるで手に取るように理解できた。
(……………怖い、よな…)
深い闇を小柄なその背に負い、表裏一体の光を併せ持つ子ども。
しかしその実態はまだ幼く繊細で脆い、ただの子どもだ。
音も無く、気配の余韻すら残さず、子どもは火影の前から掻き消える。
まるでそこに最初からいなかったような、完璧な存在の無。
執務室から子どもの気配が完全に消えたと確認し、火影は大きく息をついた。
「…いっそ、里を捨ててくれれば、幸せになれたのかのう…」
今この場にいるのは、火影としてでなくただ子どもの幸せを願う老人と、そして老人視点の横島のみであった。
「…誰か、あの子を救ってくれる者が…いや、………………いかんな、年をとるとどうも涙腺が弱くなる」
人知れず、老人は袖で目許を拭う。その様子を横島はじっと見ていた。
最高機密事項として下された厳命。
九尾について他言しないようにと、三代目火影は里全体に言い渡した。
しかしながら、例え処罰が下るとしても、里人は九尾に憎しみを抱く。厳しく管理されているからこそ、里を襲った災禍に恨みを持つ大人達は益々怨言を並べた。
高まるその怨嗟の声は、自然と九尾を体内に封印された子どもへ向けられる。
三代目火影は、子どもが四代目の子だという事実をも直隠しにしていた。
旧家や血継限界の子どもでさえその血筋故に誘拐されるというのに、若くして才能に溢れていた四代目火影の子だと知られれば子どもに危険が及ぶ。
そういった理由からの隠蔽だったが、それは全て裏目に出た。
四代目火影の逝去の元凶だと、里人は子どもと九尾を同一視するようになる。
彼らにとって四代目はかつてない程の人望を集め、敬愛に値する存在
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ