五 狐の道化 後編
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まんまる月が闇を彩る夜。
月の如く金の髪を持つ幼子はいつものように無表情で「お願いがあるんだけど」と口にした。
滅多にない幼子からの頼みに火影は口許を緩ませたが、その内容に驚愕する。
幼子のお願いとは――――木ノ葉隠れの里・火影直属の影の部隊―暗殺戦術特殊部隊・通称暗部に入りたいという事。
火影は反対した。しかし幼子は断固として譲らなかった。
里の重鎮が忌避の対象として己を見ていると、幼子は察していた。そして唯一弁護しているのが、目の前の火影だけだとも。
重鎮達がもし幼子の実力を知ればどうなるだろう。強硬手段を使ってでも幽閉し隔離する事が目に見え、聡明な幼子は力を隠さねばならぬと確信していた。
それ故力の無い子どもとして振舞うのが妥当だと、この時点で考えていたのだ。
けれど日頃罵声を浴びせられる身を唯一案じてくれる三代目火影を、身を守るすべを指南してくれた彼を幼子は守りたかった。
表では弱い子どもを演じつつ、裏では火影に教わった力を存分に発揮したいと常日頃願っていた。
そのため素顔を仮面で隠す暗部に入る事が幼子の目標となったのだ。加えて『忍は里人を傷つける事は許されない』という掟を尤も厳重に取り締まっている暗部は、幼子にとって自制する場所にちょうど良かったのである。
いつ里に対して我慢の限界が来るかわからない。けれど三代目火影は守りたい。
矛盾する思いは幼子を暗部へと駆り立てた。考え倦んだ故の幼子の結論に、火影たる老人は何も言う事が出来なかった。
結局、火影は折れた。
九尾襲来で多くの忍が逝き、人材不足だったこともあるが、突き抜ける蒼天のような瞳で見つめる子に圧倒された。
それに加え、幼子の次の言葉に陥落してしまったのである。
「じいちゃんを影で守りたいんだ」
(……じじ馬鹿だな)と、横島は納得した。
ただ、里の長たる老人だけが、子どもの居場所。
しかし長以外の人間には、いつでもひどく暴力を受けた。
体と心どちらも、抉り、貪り、つき落とすその力。
それはいつも繰り返される。
何度も。何度も何度も。
その醜い暴力は、純真だった子どもを黒く染め上げる。
人間の汚い部分ばかりを知識として蓄積してしまった彼は、感情を知らない。
ただあるのは、生きるすべに身に付けた力。
何度も死の淵から生還する合間に、自然と覚えた暗殺術。
現役にプロフェッサー、忍の神とまで呼ばれていた火影から伝授された、忍術の全て。
そして己の体を顧みない無茶な修行をした結果…
齢4つの頃には、保護者である里長を守りたいその一心だけで、
火影直属の忍者部隊―暗殺戦術特殊部隊、通称暗部の総隊長まで上りつめた。
月が
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