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同士との邂逅
四 狐の道化 前編
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ている。どうやら里の重鎮らしい彼らは、動揺と非難の目を火影に向けていた。
室内を漂う険悪な空気にはピリピリとした緊張感が交わっている。


「……三代目。九尾の器をいつまで放任するおつもりか?」

ようやくその内の一人が口を開く。その一言は静寂に包まれた会議室に滲み渡った。

「申し上げたであろう?一刻も早く幽閉すべきだと」
「それが駄目ならせめて里から隔離すべきだ」

口々に言い募るその場の面々の顔を冷めた目で見ながら、火影は静かに言葉を紡いだ。
「あの子は木の葉の里で生まれた普通の子どもじゃ……器などと呼ぶでない」



火影の言葉に老人達は耳を疑う。
何を考えているんだと呆れ、直後各々が矢継ぎ早に不平を言い出した。

「我らには里人を守る義務がある。三代目よ、貴公は里を恐怖に陥れるおつもりか?」
「今からでも遅くはない。即刻堅牢に幽閉すべきだ」
「封印が解け、九尾に乗っ取られた後では遅いのだぞ!」

火影はただ瞳を閉じ、それらの抗議を黙殺している。


老人達の内一際厳粛な雰囲気を称える老人が詰問するかのような口調で話し掛けた。
「器の幽閉及び隔離という意見に反対しているのは―――三代目、そなただけだ」




そこでようやく火影はうっすらと目を開ける。彼は鷹揚に構えたまま、口許にゆるりと笑みを浮かべた。


「この里は一本の樹じゃ。茂る葉の一枚一枚が里人ならば、若葉たる子どもも木を形作る大切な一人。あの子を合わせて、木の葉の里なのじゃ」
「…里の災厄を、放置するというのか」
「お主らがなんと言おうと、あの子はこの里で生まれた大切な、大切な子どもじゃ」
一言一句噛み締めるように言い切った火影を、老人達は訝しむような表情で見遣る。
「四代目が施した術じゃ。そう簡単に破れはせんよ…もう少し気楽に構えたらどうじゃ?わしのようにの」
食えない笑みを浮かべるが真剣な色を帯びる眼で火影は真っ直ぐに老人達を見据える。彼の視線にその場の面々はたじろぎ、そして悟った。
断固として反対する火影とこれ以上議論を上下しても無意味だと。




「………――――今は火影に従いましょう。しかし九尾の兆しが少しでも垣間見えたその時は―――――」
「即座に幽閉し隔離する」
納得のいかない顔をしながらも椅子から立ち上がった老人達は、火影に背中を向ける。



「いつ封印が解けるか九尾に乗っ取られるか…どちらにせよあの災厄の再現は避けねばならぬ」
「未だに災厄の爪痕が皆の心に残っているというに、器を野放しするとは何をお考えなのか」

火影への不平不満を態と大きな声で言い合いながら、彼らは会議室を後にした。バタンと扉の開閉音が室内に響く。





会議室には先ほどまで
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