四 狐の道化 前編
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暴狼藉。蹂躙し惨たらしく傷つける。毒を盛り首を絞め、刃物で切り付ける…死の一歩手前が幼子の日常だった。
しかし、老人はすぐに気づくことはできなかった。幼子に、傷の痕が見当たらないことが原因である。
何度傷つけても幼子の体はすぐに癒えてしまう。傷は跡形も無く綺麗に消え、毒も効力が次第に無くなっていくといった高い治癒能力。
そのことに横島は感嘆したが、映像内の使用人はますます幼子を異怖し、どうせ治るのだからと暴力を更に振るうようになっていった。
ようやく老人が気づいた時には、幼子は自閉症で声が出なくなっていた。
何度別の世話役を頼んでも、幼子は殺され掛ける。
故に、老人は火影の職務の傍ら、己の手で育てることにした。
火影邸最奥の一間を当てがい、老人は不器用ながらも懇切丁寧に幼子と接した。その成果もあり、二年後には幼子は声が出るようになっていた。
幼さを含む澄んだ声で淡々と言葉を紡ぐその姿は子どもらしからぬ様だったが、それでも他人に心を開き掛けた証拠であった。
だが、老人の努力は一晩で覆される。
ある晩火影邸に忍びこんだ手練の忍び達に、幼子は再び殺され掛けた。
またもや危機を察した火影が救出したが、クナイで斬りつけられた幼子には他人への恐怖が植え付けられた。
その一件以来、老人以外と口を利かなくなり、ただ書棚の本や巻物を読む生活を幼子は送っていた。
いつ危険に晒されるかと危惧した老人は幼子に身を守るすべを伝授し、その度に言い聞かせた。
「ただ、強く在れ」
木ノ葉の里における全ての忍術を把握していた三代目火影は、持って生まれた幼子の忍びとしての才能を見出す。
幼子はまるで大樹が水を吸い上げる如く、様々な術や技を早急に吸収していった。
その成長ぶりに、歴代の火影の中でも最強と謳われた彼の知る全ての術を教え、鍛え上げてしまう。
気づいた時には、書棚の難しい専門書の知識を蓄積した頭脳も加え、幼子は大人顔負けの力をつけていた。
まさに、最強。至高の極み。
火影である老人を越えるべく、幼子は更に精進する。
すでに老人にも手が届かぬほどの力まで手にしているにもかかわらず、あらゆる知識とあらゆる技、忍術・体術・幻術・医療忍術・封印術・秘伝術・禁術、果ては自身が創りだした術を身につけた。
それはただひとえに、老人の言葉を実行する故。
「ただ、強く在れ」
…老人にとっては、そういう意味ではなかったのであろう。逆境にめげないほどの強い心を幼子に持ってほしかった、それだけだったのだ。
しかし、幼子にとっては唯一無二の味方である老人の言葉は絶対であった。
場面はどこかの会議室へと移った。
火影たる老人と、見知らぬ老人達が対峙し
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