四 狐の道化 前編
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と、ただただ嘆く。
されど金と紅の男女は、腹を裂かれても未だ立っていた。ぽたりぽたりと、黒ずんだ赤い泉が彼らの足元を染め上げている。
崩れ落ちそうになる膝を叱咤しながら、二人は今まで庇っていたモノを見つめていた。包まれているのは、生を受けたばかりであろう幼子。
どこか二人の面影があるそれを愛おしそうに撫で、金と紅の男女は小さく呟いた。
途端、閃光が奔る。
眩しさに目を細めた横島の耳に、どちらの者かわからぬ謝罪の声が響いた。
「ごめんね…ナルト……」
次の瞬間には、九尾の姿は消えていた。
見守っていた人々が息を呑む。静寂が、壊滅寸前の里を包み込んだ。
その静寂を、幼子の慟哭が引き裂いた。
横島の視点が、九尾に抉り取られてできた大きなクレーターへと移る。
焦土と化した大地。散乱する木々を踏み越え、老人は泣き声のする方向へ近づく。
彼の視界に映るのは、窪める場所の中心にて、火がついたように泣いている幼子。
その傍には幼子を守るような形で、金髪の男性と紅髪の女性が息を引き取っていた。
骨ばった無骨な手で、老人は幼子を掻き抱いた。
今まさに生まれたばかりの幼子の腹に、何か呪のような模様が浮かんでいる。
先ほどまで無かったその模様に、多少なりともオカルトを齧っている横島は何かの封印呪だと思い当った。
封印対象は言うまでもないだろう…。
年老いて動かぬ老体が恨めしいと、老人は幼子と共に泣いていた。
九尾の襲来にて、命を落とした者は多く。中でも、金髪の男性の死は嘆かれた。
彼は四代目火影として立派な人物だと、英雄として祭り上げられる。そして対照的に恨みと憎しみの対象として里人は幼子を蔑み、忌み嫌うようになった。
幼子に、親はいない。
保護者として名乗りを上げたのは、四代目亡き今再び火影の座に復帰した老人であった。
しかし三代目火影であり里の長である彼は、九尾の狐によって壊滅寸前となった里の復興に力を注がなくてはならなかった。忙しく、幼子を世話する暇などない。
そこで世話役として乳母や教育係といった使用人を雇い世話を申し付けるが、幼子にとっては悲劇の始まりでしかなかった。
激務の合間に老人が様子を窺いに行った時、乳母である女が幼子の首を絞めている光景を目の当たりにする。
老人の視点から見ている横島も、幼子に対する乳母の血走った眼が尋常でないと感じていた。
幼子をすぐさま救った老人は、乳母と教育係を即座に首にした。そして新しい世話役を雇うが、こちらも同じ結果となった。
世話役達は老人の目を盗んでは、幼子をあらゆる方法で殺害しようとした。
言葉荒に詰っては幼子ひとりに乱
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