暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
ALO
〜妖精郷と魔法の歌劇〜
妖精の園
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翅を広げてホバリングしながらレコンを両手で手招きする。

顔を上げて周囲を見渡し、広大な樹海の彼方、夜闇の中に一際黒くそびえ立つ世界樹を見つけると、そこを起点にシルフの領土がある方向を見定める。

レコンがようやく同じ高度まで追いついてきたのを確認し、今度は速度を合わせて宙を滑るように飛び始めた。

隣に並んだレコンが、顔を強張らせながら言った。

「ちょ、ちょっと高度取りすぎじゃない?」

「高いほうが気持ちいいじゃない。翅が疲れてもいっぱい滑空(グライド)できるしさ」

「リーファちゃんは飛ぶと人格変わるしなぁ………」

「何か言った?」

「う、ううん、なんでも」

軽口を叩きながら、アルヴヘイム南西域にあるシルフ領目指して巡航していく。

今日は、レコンを含む気心の知れた仲間四人と待ち合わせ、シルフ領の北東、中立域のダンジョンで狩りをした。幸い他のパーティーとも鉢合わせることもなく充実した冒険を行い、たっぷりとお金とアイテムを稼いで、さて帰ろうというところで、サラマンダーの八人パーティーに待ち伏せされてしまったのだ。

異種族同士なら戦闘可能なALOではあるが、あからさまに追い剥ぎめいたことをするプレイヤーはむしろ少数派と言っていい。

特に今回の冒険は、現実世界では平日の午後ということもあって、そう大人の襲撃部隊は現れないだろうと予想していたのだが、見事にその油断を突かれてしまった。

逃亡しながら二度のエアレイドで敵味方ともに三人ずつを減らし、元々人数の少なかったリーファ達はわずか二人を残すのみとなってしまったが、飛行速度でサラマンダーに優るアドバンテージを活かしてどうにか追撃を振り切り、あと少しでシルフ領に到達できるというところまで来た。

二度の戦闘で酔ったレコンの回復に時間を取られてしまったが、この調子ならどうにかテリトリーに逃げ込めるかなと思いながら、リーファが何気なく背後の森を振り返った時───

鬱蒼と立ち並ぶ巨木の下で、オレンジ色の閃光がちかりと瞬いた。

「レコン!!回避!!」

リーファは咄嗟に叫び、左下方に急速旋回した。

直後、木の葉の隙間を貫いて、地上から三本の火線が猛烈な勢いで伸び上がっていた。

高度を取っていたことが幸いし、長く尾を引く熱線はギリギリのタイミングで直前に二人が飛行していた空間を焼き焦がしながら夜空へと消えていった。

だが胸を撫で下ろす暇はない。攻撃魔法が放たれた辺りの樹海から、五つの赤黒い影が飛び出し、急速にリーファ達目掛けて上昇してくる。

「もー、しつこいなあ!!」

リーファは毒づくと、北西の方角に眼を凝らした。シルフ領の中央に立つ巨大な《風の塔》の灯りはまだ見えない。

「仕方ない、戦闘準備!!」

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