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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十六話  攻防
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と見たか。視線を向けられたトリューニヒトは幾分迷惑そうな表情をしている。狸め、なかなかの役者ぶりだな、トリューニヒト。上手くこいつらをあしらってくれよ。昨日、あれだけヴァレンシュタインと予習したのだからな。

「まず言っておきたい、私はイゼルローン要塞攻略には反対だ。余りにも危険が、不確定要因が多すぎると考えている。これは私だけでは無い、シトレ元帥、ヴァレンシュタイン中将も同意見だ。軍の方針は帝国軍を同盟領へ引きずり込んでの撃破という事に変化は無い」

トリューニヒトが周囲を見渡すと何人かが不安そうな表情を、残りは不満そうな表情を見せた。出だしは良好だな、最初に先制パンチだ。
「諸君には私の危惧する所を聞いてもらった方が良いだろう」
「……」

「まずヴァレンシュタイン中将の作戦案だが必ず成功するとは限らない。何の作戦も無く正面から攻めるよりは勝算が有る、その程度のものだ。過度の期待は危険だ」
トリューニヒトの言葉に皆が不満そうな表情をした、特にターレル、ボローンの渋面は酷い。ヴァレンシュタインの作戦案だからな、必ず勝つと期待していたのだろう。或いはそういう風に誰かに吹きこまれたか……。

「それにイゼルローン要塞を攻略すればブラウンシュバイク公達の政治的立場は弱体化する。彼らが行おうとしている改革は失敗するだろう」
「……」
トリューニヒトが周囲を見回したが誰も口を開こうとしない。意味が分かっているのだろうか……。

「帝国は今純粋に兵力が足りない。この状態でイゼルローン要塞が奪われればブラウンシュバイク公達は貴族の兵力を当てにせざるを得ない。つまり貴族達の発言力が強まり改革は骨抜きになるという事だ。我々は貴族達の応援をして改革を潰している様なものだな、帝国の平民は同盟を怨むだろう。この状況で革命が起きても彼らが民主共和制を選択するとは思えない」
トリューニヒトの言葉に皆が困惑した様な表情を見せた。“貴族達の応援をしている様なものだ”、“民主共和制を選択するとは思えない”が効いた様だ。

「イゼルローン要塞を攻略すれば帝国辺境と接する事になるが辺境は極めて貧しい。彼らが我々に近付くとすれば民主共和制の導入よりも経済面での援助を求めての事だろう。そして貴族達はそれを防ごうとする。戦争と経済援助、膨大な出費が発生するだろうな」

トリューニヒトが私を見た。御苦労さん、今度は私の番だな。もっとも周囲にはトリューニヒトが私の意見を聞きたがっている、そう見えるだろう。敢えてトリューニヒトを睨み据えた。
「冗談ではないぞ、国防委員長。そんな金は何処にもない! イゼルローン要塞攻略など論外だ!」

「国債を発行してはどうかね」
良い質問だな、バラース。ところでお前、国債が借金だと分かっているか? そののんびりした口調からは
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