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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十六話  攻防
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。皆もバラースの言葉に頷いている、好い気なものだ。

「どうかな、問題が無いとは言えないと思うがね」
ホアンが興奮している連中を窘めた、連中が不満そうにホアンに視線を向けたがホアンは気にすることもなく言葉を続けた。
「革命で帝国が混乱すれば地球教は帝国領内で生き延びるかもしれない、違うかね」

バラース達が表情に困惑を浮かべた。こいつらも地球教は怖いらしい、或いは気味が悪いのか。
「それに革命が起きた後、民主共和制が誕生するという保証は何処にも無いだろう」
「それは……」
「フランス革命を考えてみたまえ、ジャコバン派による恐怖政治を経てナポレオンによる独裁政治に移った。ロシア革命も同様だ、一党独裁などという訳の分からん物を生み出した。それでも素直に喜べるかね、君達は」
「……」

ホアンの皮肉に満ちた言葉に皆が黙り込んだ。もっとも表情は必ずしも納得したものではない。不満は有るが反論できない、そんなところだろう。皆、革命が起きれば君主制独裁政治が倒れ民主共和政に移ると信じたいのだ。自由惑星同盟が勝ったと思いたいのに違いない。

「ならば我々の手で彼らを民主共和制へ導くべきではないかな。イゼルローン要塞を攻略し帝国辺境と直接接する事が出来るようになれば可能なはずだ。帝国の改革など待つ必要は無いだろう」
経済開発委員長エドワード・トレルの言葉に参加者の多くが頷いた。やれやれだな、誰かが言うとは思ったがお前だったか、この馬鹿トレル! 皆も頷くんじゃない! ウンザリするな、溜息が出そうだ……。

こいつらは何も分かっていない、自分に都合のよい夢ばかり見てそこに潜む危険性をなんら読み取ろうとしない。トリューニヒトの眉が微かに動くのが見えた。多分私と同じ思いだろう。議長のサンフォードは無表情に皆を見ている、どうやら様子見をしているようだ、やはりこの男に定見は無い……。

「国防委員長、イゼルローン要塞攻略を考えるべきではないかな。以前ヴァレンシュタイン中将が攻略作戦案を提示したと聞いている。実現性が高いそうじゃないか」
ボローンか、お前がその作戦案を持ち出すという事は何処かの主戦論者に焚き付けられたな。お前は警備をしっかりやれば良いんだ、余計な事は考えるな、この間抜け!

「その事は私も聞いている。トリューニヒト国防委員長はイゼルローン要塞攻略に消極的なようだがそろそろ方針を転換するべきだろう、時が来ていると私は考えるのだが」
時が来ているというターレルの言葉に何人かが強く頷いた。胸に響く良い言葉だ、この役立たずが! ターレル、お前もボローンの仲間か。お前のその口にマスタードを思いっきり塗りつけてやりたいよ、そうすれば少しは気が晴れるだろう。

皆の視線はトリューニヒトに向かっている。サンフォードも興味深げだ。出兵論が優勢
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