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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十六話  攻防
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トリューニヒトが相槌を打つと他の三人もようやく表情から渋さが消えた。

『我々は焦り過ぎか……』
「私にはそう見えますね」
『では我々は何をすれば良いかな、ヴァレンシュタイン中将』
ようやく落ち着いてきたようだな。トリューニヒトの口調、表情には微かに笑いの成分が有る。喰えない男、復活か……、可愛くないな、落ち込んでる方がまだ可愛げがある。少し苛めてやるか。



宇宙歴 795年 9月27日    ハイネセン  最高評議会ビル    ジョアン・レベロ



最高評議会が開かれている会議室のスクリーンには帝国政府が発表した改革案を伝えるアナウンサーの姿が有った。改革の内容が一つ一つ発表されていく。
直接税、間接税の引き下げ、裁判制度の見直し……。そこから読み取れるのは貴族の権利の抑制と平民の権利の拡大だ。

「改革を行うというのか、帝国は」
副議長兼国務委員長のジョージ・ターレルが呟いた。声には信じられないと言った響きが有る。他のメンバーも困惑した様な表情をしている、ターレル同様帝国が改革を行うという事が信じられないのだろう。表情に変化が無いのはトリューニヒトとホアンぐらいのものだ。多分、私もそうだろう。彼らの気持ちが分からないでもない、我々も最初は信じられなかった、想定していても信じられなかったのだ。

「しかし税率の上限の数字など決まっていない事が多いが……」
「改革の実施は来年からだ、数字はそれまでに決めるのだろうな」
不安そうな表情で問い掛けたのはダスティ・ラウド地域社会開発委員長、答えたのはガイ・マクワイヤー天然資源委員長……。

「貴族達の反応が分からない所為だろう、踏み込めずにいるのだ」
皆がトリューニヒトに視線を向けた。その視線に応えるように言葉が続く。
「貴族達の多くがクロプシュトック侯の反乱鎮圧のためにオーディンを留守にしている。彼らがどう反応するかで数字は変わるだろうな」

「では場合によっては改革は形だけのものになる可能性もあると?」
「その可能性が有ると私は考えているよ、地域社会開発委員長」
「……」
ラウドが沈黙した、ラウドだけでは無い、皆が沈黙している。将来図が描けない、そんなところだろう。

「ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯は改革をしなければ帝国は持たない、一つ間違えば革命が起きるのではないかと危惧しているようだ。しかし大貴族達は自らの既得権益を制限されたくは無いと考えている、両者のせめぎ合いになるのではないかな、前途多難だ」
トリューニヒトの言葉に皆が顔を見合わせた。

「革命か……、君主制独裁政治が民衆の力で倒れる、悪い事ではないと思うが……」
シャルル・バラース情報交通委員長が皆に話しかけた。幾分頬を上気させている、多少興奮しているようだ
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