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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百五十六話 寝返り
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スキーがじっと俺を見た。そしてフッと笑みを浮かべた。

『なるほど、何時までにですかな。商品には賞味期限が有りますが』
「まず半年、遅くとも一年。如何です?」
『分かりました。吉報をお待ちください』
自信が有るようだ、どうやらこれも想定内か。こっちが切っ掛けが得られず困っている、付け込む隙が有る、そう踏んだか、可愛げのない奴。だからお前は嫌われるんだ、少しは慌てて見せれば良いのに……。

「ところで新帝国では貴方はどんな仕事を望みます? あいにく通商を扱う仕事はボルテック弁務官に任せようと考えています」
『なるほど』
「出来れば貴方の望みをかなえたいと思いますが」

俺の問いかけにルビンスキーは少し考え込む姿を見せた。まあポーズだろう、俺とボルテックが親しい事をルビンスキーは分かっているはずだ。俺がボルテックに何を望んでいるか、全く気付いていないとも思えない。本来ならルビンスキーが最も欲しがる仕事のはずなのだ。となると代わりに何を望む。

『閣下の補佐官と言うのは如何ですかな』
思い付いたという顔だな。しかし補佐官?
「……」
『閣下は軍人ですが内政、改革にも関与されています。そちらの方で使って頂ければと思うのですが……』
「なるほど」

なるほど、補佐官か……。変に役割を決められるより補佐官の方が守備範囲が広い。それに曖昧なだけに個人の力量次第で影響力が増減する、ルビンスキーなら増大させることは容易いだろう……。フェザーン人ならではの発想だな、自治領主の下には補佐官が何人か居る。

『如何ですかな、閣下』
ルビンスキーが覗き込む様な視線で俺を見ている。
「良いでしょう、期待していますよ、ルビンスキー補佐官」
ルビンスキーが今度はふてぶてしい笑みを浮かべた。だからお前は悪人顔だっていうんだ。

『私の連絡先ですが……』
「それは聞かない方が良いでしょう」
『……よろしいのですかな』
少し驚いたような顔をしているな、今度は想定外か?

「構いません、万一の事が有って貴方に疑われるのは避けたい。貴方は同盟から追われる身ですからね」
『……閣下は慎重ですな』
ルビンスキーが俺をじっと見ながら頷いている。

俺なら敢えて番号を相手に伝える。弱い立場の人間が強い立場の人間に誠意を見せるには正直である事と隠し事をしない事を相手に理解させるしかない。人としての可愛げを出す、その上で役に立つことを相手に理解させる。ルビンスキー、お前ならどうする?

『分かりました、ではまた連絡させていただきます』
「楽しみにしていますよ」
通信が切れスクリーンには何も映らなくなった。残念だよ、ルビンスキー……。お前は俺の期待には応えられなかった。応えていれば少しは俺も考えたのだがな……。

ルビンスキーは俺を
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