第六章
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「炭もね」
「さしあたってはそれしかなく」
「その後だね」
「どうされますか」
「領民への救済だね」
それだというのだ。
「それへの出費は惜しまない様にしよう」
「畏まりました」
こうした話になった。救済策はかなりの出費になったがそうするしかなかった。伯爵にとっては実に痛いことだった。
それでも寒波の件も何とか乗り切り内政を続けた。その伯爵のところに。
今度はこの話が来た、それはというと。
「結婚?」
「はい、姉君のアンネローゼ様のことですが」
「ああ、そういえばそうだったね」
伯爵も今気付いた顔になって言う。
「姉上に妹達、弟達も」
「そのことですが」
「うん、何とかしないといけないね」
「どなたとのご結婚を」
「ランズベルグ侯爵はいいかな」
伯爵が出した名前はこれだった。
「彼は」
「ランズベルグ侯爵ですか」
「中央にも顔が利くしね」
その権勢からのことだった。
「あの人はどうかな」
「そうですね。資産もありますし」
「人格円満だしね」
「はい、好人物でもあります」
「姉上はランズベルグ侯爵のところに嫁いでもらおう」
「妹様や弟様達は」
彼等のことも問題だった。
「どうされますか」
「そうだね。どうしようかな」
今度は縁談の話だった。伯爵はこのことでも多忙になった。
領内も朗地の外も走り回る、その彼にそのアンネローゼ、大人しい雰囲気に見事な美貌を備えた彼女がこう言ってきた。
「爵位を継いでからどうも」
「はい、休まる暇がないです」
実際にその通りだった。
「全く」
「そうですね。ですが」
「休息も大事だと仰るのですね」
「疲れが顔に出ています」
アンネローゼは弟のその貌を見て述べた。
「それ以上何かあると」
「大丈夫です。寝てはいますから」
「本当ですか?」
「食べてもいますし身体も動かしています」
どれだけ忙しくとも馬に乗り剣を操る稽古を忘れてはならなかった。何しろ何時戦があるかわからないからである。
「少なくとも身体を壊してはいません」
「ならいいのですが」
「それよりも姉上」
伯爵は自分から姉に言った。
「宜しいでしょうか」
「私の結婚のことですね」
「侯爵家に嫁ぐことになりますが」
「はい」
アンネローゼはこのことについては粛然と答えた。
「わかっています」
「ならいいのですが」
「よい方とのことですね」
「はい、そうです」
貴族の結婚は家同士の結婚でありお互いの相手を選ぶことは出来ない。アンネローゼもこのことはわかっている。
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