第二章
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しかし今はというのだ。
「これ位かな」
「また収入が入ればですね」
「農業の方はさらに充実させたいね。そうだね」
伯爵は考える顔でその整った形の顎に左手を当てて机の書類を見て考える。見れば豊かな金髪は前ではねており灰色の目は澄んでいる。顔立ちは中性的であり背はまだ小さいが身体つきは細身で整っている。その上で貴族の服を着ている。
その彼が考えながら言うのだった。
「この領地は葡萄が採れるからね」
「葡萄の栽培も増やしますか」
「そこからワインを造って売ろう」
そうしようというのだ。
「今あるだけでもワインを売ろう」
「わかりました。そしてお金を作りますね」
「牛や豚も多いね」
幸いにして家畜にも恵まれている。
「チーズやバターも売れるしね」
「そうですね。帝国全体に売りましょう」
「そして豚はベーコンやハムにして売ろう、とにかく収入を増やそう」
「まずはそこからですね」
「全く、爵位を受け継いですぐこうなるなんて」
「それが領主の宿命です」
男爵は静かな声で若い主に答えた。
「では頑張って下さい」
「やれやれだね」
爵位を受け継いだその日から早速大忙しだった。辺境伯領は深刻な財政危機にありまずはそれを立て直すことからだった。
幸い今は外敵がいないので内政に専念できた。ワインやらチーズを売ってとりあえずの金は稼ぎ農業から内政をしていった。だが。
「堤防は中々築けないね」
「そうですね」
伯爵は堤を築く現場に馬を出して視察に出ていた。男爵も一緒だ。
その作業を見て難しい顔で言う、丁度雨が降っていた。
その雨を見てこう言うのだ。
「雨が続くから」
「しかも中々強い雨ですから」
「困ったね、堤防を築けば水害が減るのに」
「しかも灌漑設備と一緒に築いていますから」
この二つを一つにして進めていたのだ。だが、だったのだ。
「この雨では」
「土が崩れるし」
実際に土が軟らかくなり運びにくくなっていた。それで作業が遅れていたのだ。
「これじゃあね」
「どうされますか?このままでは」
男爵は怪訝な顔で伯爵に言った。
「土砂崩れも」
「そして人夫が巻き込まれるね」
「そうなっては元も子もありませんが」
「わかったよ。無念だけれど」
伯爵は苦々しい顔で男爵に答えた。
「一時中止しよう」
「雨が止むまでは」
「そうして土がしっかりしてから作業を再開しよう」
「わかりました」
「もうすぐ刈り入れ時なのに」
人夫はそっちに戻ってもらわないとならない、つまりもうすぐ堤を築くこと自体ができなくなるというのだ。
「参ったね」
「こればかりはどうしようもありませんね」
「待つか、雨が止んで刈り入れ時が終わるのを」
「そして豚を潰してベーコンやハムを作る
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