第三章
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その不気味なものを見てまた言う裕貴だった。
「それで今からだよな」
「水産科の中に入るわよ」
「それでか」
「そう、そこに海軍士官の幽霊がいるから」
その幽霊に会って幽霊に足があるかどうかを調べるというのだ。
「何でも刀や銃は振り回さないそうだから」
「軍人さんでもか」
「取り憑くこともないから」
そうしたこともないというのだ。
「怖い幽霊じゃないそうよ」
「幽霊も怖い怖くないがあるのかよ」
「だって。魂が身体から出ただけよ」
それが幽霊である、またこの話になる。
「生身の人だって怖い人とそうでない人がいるじゃない」
「そういうことかよ」
「そう。だから怖い幽霊と怖くない幽霊がいるのよ」
霊能力者だけあってそうしたことはよくわかっているみつきだった。
「わかってくれたかしら」
「まあな。それじゃあか」
「会いに行くわよ」
「わかった、それじゃあな」
裕貴はみつきの言葉に頷きそうしてだった。
そのみつきと一緒に水産科の校舎の中に入った、水産科の校舎の中も普通科のものと変わりはしない。
だがやはり暗く人気がない、物陰に何が潜んでいるのかと思うと怖くなることは密閉されているだけあって外よりも怖かった。
その水産科に入るとこう言うみつきだった。
「じゃあこの中にいるから」
「後は探すだけか」
「今丁度十二時よ」
みつきは自分の腕時計も見て言う。
「出る時間よ」
「じゃあ今目の前に出て来てもおかしくないんだな」
「そういうことね」
「まあなあ。怖くない幽霊ならいいけれどな」
裕貴はみつきの話を聞いてこう考えることにした。
それで二人で前に出た、すると早速だった。
「私を見に来たのか」
端正な青年の声が横から聞こえてきた。
「そうなのか」
「はい、そうです」
みつきがあっさりと答える。
「水産科の海軍士官の幽霊さんですね」
「その通りだ。名前は日下部という」
向こうから幽霊であると名乗ってきた。
「海上自衛隊にもいた、だが若き日は海軍の経理将校だった」
「やっぱりそうですか」
「そうだ、それで私に何の用だ」
その日下部という海軍将校の幽霊は二人にさらに言ってくる。
「お祓いなら意味がないぞ。私は悪霊ではないからな」
「別にそういうことではないですから」
三月もそのことは否定する。
「ただ確かめたいことがありまして」
「何だ、それは」
「幽霊に足があるかどうかです」
みつきは裕貴との賭けをそのまま相手に述べた。
「そのことですが」
「足のことか」
「はい、足です」
まさにそのことだというのだ。
「足があるかどうかですか」
「そういうことか。それならだ」
「はい、見ていいでしょうか」
「存分に見ることだ」
校
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