第二章
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英吉利に留学経験のある、東郷と同じくそうである将校の一人がいぶかしむ顔でこう言った。
「これは一体」
「はい、ビーフシチューです」
曹長は胸を張り満面の笑みでその将校の言葉に答えた。
「作らせて頂きました」
「いや、これは」
その将校は曹長に顔を向けて自分の席から言った。
「どう見ても」
「いや、これはビーフシチューだ」
だがここで東郷は穏やかな笑みでこう言った。
「これこそがな」
「ですが司令これは」
「いや、ビーフシチューだ」
東郷は将校に対してまた言った。
「それだ」
「そうですか」
「では食べよう」
今度は他の将校達にも告げた。
「今からな」
「わかりました。それでは」
「今から」
士官室のそれぞれの席に座る将校達は皆東郷の言葉に頷いた。そのうえでそのビーフシチューを食べた。その味は。
「これは」
「美味いな」
「肉もジャガイモも柔らかい」
「よく煮られていて調味料の味がよくしみ込んでいる」
食べやすく味もいいというのだ。
「御飯にも合うな」
「このビーゥシチューはいいな」
「うん、美味い」
「これはいける」
将校達は笑顔でそのビーフシチューを食べていく。そして。
東郷も曹長に笑顔でこう言った。
「美味い、最高のビーフシチューだ」
「有り難うございます」
「よかったらこれからも作ってくれるか」
「また作って宜しいのですね」
「是非頼む」
こう曹長に言うのである。
「ビーフシチューをな」
「わかりました、それでは」
「美味いししかも栄養のバランスもいい」
肉にジャガイモ、それに人参に玉葱だ。曹長はそこに加えて糸こんにゃくまで入れている。このこんにゃくがまた味を引き立てていた。
「また食べたい」
「ではこれからも」
「カレーと並ぶな」
東郷はこうまで言った。
「これは最高の料理だ」
「ビーフシチューはですね」
「そうだ、最高のビーフシチューだ」
東郷は満面の笑みでこのビーフシチューを褒め称えた。そしてここからだった。
この料理は海軍全体に広まり日本の食卓に定着した、小学校の給食で子供達はこの料理を食べながら言うのだった。
「このお料理美味しいよね」
「うん、そうだね」
「肉じゃが最高だよね」
「お肉も一杯入ってるし」
「すき焼きみたいでいいよね」
「幾らでも食べられるよ」
「そうだぞ、肉じゃがは昔から日本にある料理なんだぞ」
担任の先生も笑顔で子供達に言う。
「美味しいからな。だから一杯食べるんだぞ」
「はい先生、何杯でもおかわりしますね」
「お腹一杯食べますね」
子供達も笑顔で応える。皆ビーフシチューとは呼ばない、だが肉じゃがは笑顔で食べる、そのはじまりは知らなくとも子供達も笑顔で食べるのだっ
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