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北ウィング
第六章
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「いや、本当にさ」
「そうかもね。けれどね」
「俺のところに来てくれたんだよな」
「そうよ。この国でも一緒よ」
 私はこの事実を彼に告げた。
「離れることはないわ」
「だよな。それはな」
「ええ。この国でもね」
「わかったよ。じゃあ一緒にいような」
「お部屋は何処?」
「いや、部屋じゃなくてさ」
「違うの」
「この国は土地があって人口が少なくてさ・。しかも木が多くて」 
 それでだという。
「家を作るのには困らないんだよ」
「じゃあお家なの」
「そうだよ。一軒家だよ」
「そこに三年住むのね」
「ヘルシンキのさ。この町のね」
「そうなの。じゃあ私もそこに入って」
「一緒に住むって決まってるよな」
「ええ、その手続きも済んでるから」
 転勤の書類手続きの時にそれもしていた。私にしてもこうした手続きは忘れる訳にはいかなかった。彼と一緒に住む為に。
「安心してね」
「そうか。じゃあまずはな」
「まずは?」
「何か観に行くかい?」
「フィンランドの?」
「ああ、町からちょっと出たら一面の森と湖だけれどな」
「その他には?」
「オーロラがあるさ」
 それもあるとだ。彼は私に明るい笑顔で話してくれる。
「凄いぜ、本物のオーロラは」
「それも観られるのね」
「ああ、それでどうだよ」
「お願いするわ。それじゃあね」
「まずは車で外に出てな」
 まずはそこからだった。
「森と湖を観るけれど」
「それとよね」
「ああ、空には一緒にオーロラもあるからさ」
「全部観られるのね」
「観るよな」
 彼は微笑んで私を誘ってくれる。
「今全部」
「是非ね。じゃあ三年間宜しくね」
「いや、三年じゃないな」
 彼は私の今の言葉には屈託のない笑顔で言ってくれた。
「もっとだよ。ずっとだよ」
「ずっと?」
「三年。日本から帰ってからにしようって思ったけれどな」
 それが変わった。そうした言葉だった。
「今すぐにでもいいよな。一緒だからな」
「結婚ね」
「教会でいいよな。プロテスタントな」
 フィンランドも欧州だからキリスト教だ。しかも元はスウェーデンと一緒だったのでスウェーデンと同じプロテスタントだ。
「そこでも」
「いいわ。キリスト教徒じゃないけれどいいわよね」
「それ言うと俺もだろ」
「そうね」
 私達は二人共仏教徒だ。とはいっても信仰はいい加減だけれど。
「それはね」
「とにかく。式は教会で挙げてな」
「そうしてここで三年いて」
「日本に帰ってもずっと一緒だからな」
「お互いに死ぬまでね」
「ああ、一緒だよ」 
 彼は優しい微笑みのまま私に言ってくれた。そうして。
 私達はまずは町の外の森と湖、それにオーロラを観た。北の国は確かに寒い、けれどそこには澄んだ美し
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