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神への資格
第一章 2
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に行くことが延びていることに、凄く感謝している―あそこには、嫌な思い出しかないからだ。
「もう“あれ”やっちまうのかよ…まぁ、お前がやれってんならやるけど」
 彼女の言葉で、ハッとした。それまで自分の頭の中で渦巻いていた複雑な気持ちが、一瞬で吹き飛んだ。
(今はこっちに集中しないと―それに、僕にはパートナーであるエドが居る。何を心配することがある。きっと二人なら大丈夫だ。だって、どんなピンチも二人で乗り越えて来たのだから)
 不安な気持ちを無理矢理、胸の内にしまう。少なからず男の身であるならば、女の子の前で不安な姿を曝け出してはいけない…この台詞は友人の受け売りだが、自分も確かにそう思う。自分が女であった時は、いつも感じていたことだったから。
「お願いね」
 自分の小さな声は、風に流されて届いたかどうか分からなかったが、エドは
「大丈夫、任せろよ」
と頼もしく答えてくれた。
 次の瞬間、エドは大きく身を翻し逃げて来た道に体を向ける。その先には、常人の者には見ることが出来ないであろうどす黒い闇が広がり、大量の像悪を発しながら、数えることが出来ないほどの沢山の魔の物が、迫り来ていた。自分でも怯んでしまう数の敵を見ても、エドは臆することなく力を解き放つ―。
「男なら散って見せよう、男らしく」
 この一声が合図となり、エドの体を得体の知れないエネルギーが渦巻く。それは、普通の人間であったなら得体の知れないというだけであって、自分達人間ならざる者ならば、当り前に備わっている力だ。
そうこうしている内に、エドの容姿にも変化が表れる。女であった華奢な体は、少し筋肉質になり身長も伸び、赤く長い髪は短くなる。その姿は男そのものであった。
「“俺”を敵に回したことを後悔しな!」
 恰好良く言い放つと、敵は塵も残らず吹き飛んだ。実際は言ったから吹き飛んだのではなく、二刀の刃で切り裂いただけであるのだが。それにしても、少し無駄がある動きだった…。
「有難う…でも君の技は隙があり過ぎるよね」
本音を溢しながら、礼も一緒に言った。助かった事は事実なので、一応。別に照れてる訳ではないよ?断じて。
「折角あたしが倒してやったのに、そんなお礼しか言えないのかよ」
 感謝の声に余計な言葉があったせいか―いつの間にか少女の姿に戻ったエドは、ムスッとした表情を浮かべる。感情の表わし方は、ちゃんと女の子のものであったので、ホッとする(僕がホッとする理由は、まぁ学園時代にエドの言葉遣いや感情表現の問題で、色々あっただけのことで、今の話とは全く関連性が無いのではぶくとしよう)。
「ごめんごめん。そんなことより―速く行かないと。もう時間もだいぶ掛っちゃってるから」
 エドに向けていた目を目的の方向に、場所に視線をやる。こうやって他愛のない話をしている時間も、惜しいの
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