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DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 五章
五章 導く光の物語
5-10信じる心、怯える心
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ホフマンの部屋を訪ねる。
 ミネアが扉を叩き、呼びかけるも返事がない。

 (ことわ)って扉を(ひら)き、中に入る。

 ベッドの若者が、布団(ふとん)から顔を(のぞ)かせる。

「……また、あんたらか。しつこいな」
「ホフマンさん。私たちは、あの洞窟に行ってきたのです」
「……へえ。それで?(たから)(もの)でも、手に()れた?おれを、笑いに来たのか?」

 マーニャが眉を動かし、ミネアがマーニャを(にら)む。
 マーニャは若者から顔を()らし、()える。

 ミネアが続ける。

「そうではありません。あの洞窟には、人の姿を写して人を騙す、魔物が()()っていました。私たちも、仲間の姿をしたものに、(おそ)われました」
「……それが、どうした」
「あなたを裏切り、襲ったのは、お友達ではなかったのでは?」
「そんなわけあるか。あれは、確かにあいつらだった。あいつらの顔をして、おれを、(あざ)(わら)って、楽しそうに、おれなんか!友達じゃなかったって!今さら、そんなことが!信じられるか!!」
「ホフマンさん、落ち着いて」
「どうせ、洞窟に行ったのも、嘘なんだろう!口でなら、何とでも言えるよな!適当なこと言って、馬車を(だま)()ろうっていうんだろう!帰れ!帰ってくれ!!」

 若者は身を起こし、激昂(げっこう)する。
 ミネアが、溜め息を()く。

 少女が、進み出る。

「おにいさん。これ。」

 宝石を差し出す。

「……なんだよ、これ」
「洞窟に、あったの。でも、宝物は、これじゃないんだって。」
「……やっぱり。洞窟に行ったなんて、嘘なんだな」
「ちがうの。これ、持って。見て、みて。」

 少女に宝石を押しつけられ、振り払うこともできず、若者は渋々(しぶしぶ)と宝石を受け取り、眺める。

「……これが。こんな宝石が、どうしたって言うんだ。……信じる心?……はっ、笑わせる」

 宝石が淡い光を放ち、若者を包む。
 宝石を見つめる若者は、気付かない。

「……おい」
「静かに」

 マーニャが言いかけ、ミネアが止める。

「……だけど、なぜだろう……この宝石を見ていると、心が洗われてくるようだ……」

 若者を包む光が、強さを増す。

「信じる、心……そうか!一番、大切な宝物って、人同士が、信じ合うことなんだね!」

 暗かった若者の顔が明るくなり、ベッドから勢いよく立ち上がる。

「おれが、間違っていたよ!おれを、あんたたちの仲間にしてくれないか!?もちろん、馬車も、一緒さ!」

 瞳を輝かせ、熱く訴える若者。

「……マジかよ。完全に、別人じゃねえか」
「すごい物だったんだね」

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