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DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 五章
五章 導く光の物語
5-08広がる世界
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んのほうが上手いんですけどね。他にも、楽器ならなんでも。」
「そうなの?どうして、しないの?」
「踊りながら、曲もやるってわけにゃいかねえからな。ミネアがいなけりゃ、歌って済ませることもあるが。客を呼ぶには、やっぱ(おと)があるのが()()(ばや)いからな。(かた)()()になっちまうから、進んではやらねえが」
「そうなの。すごいのね」
「ミネアにゃ、占いがあるが。オレは、しがない芸人だからな。メシのタネになりそうなことは、ひと通りな」

 話し込む三人を、片付けを終えた木こりが怒鳴りつける。

「てめえら!旅で、疲れてんだろうが!さっさと、寝やがれ!」

 木こりに無理矢理寝かしつけられ、三人は眠りにつく。



 翌朝、いつも以上に十分に休んだ少女は、日課(にっか)をこなすため、早い時間に起き出す。
 隣で眠る兄弟を起こさないように、気を付けながら布団を抜け出す。


 走り込みを終え、()()りをしていると、(おの)を持った木こりが小屋から出てきた。

 少女を見て固まり、無言(むごん)で立ち尽くす木こり。

 昨日一日で、木こりへの(わだかま)りが()けた少女が、声をかける。

「……おはよう、ございます。」

 木こりが挙動(きょどう)不審(ふしん)になりながらも、答える。

「お、おう。」

 無言で、見つめ合う。

 ()に耐えられなくなった木こりが、口を開く。

「……よ、よく。眠れたか。」
「うん」
「……いつも、やってるのか。」
「?」
「その、ほら。剣の。」
「うん」
「……(つら)く、ないのか。」
「大丈夫」
「好き、なのか?」
「……わからない。考えたこと、ない」
「……」
「強く、なりたいの。必要だから、やるの」
「……どうして、強くなりてえんだ。」
「……みんなが、喜んでくれたから。」
「……」
「みんなの、(かたき)()ちたいから。討たないと、いけないから。」
「……なんでだ。」
「……なんで?」
「なんで、おめえ……嬢ちゃんが。そこまで、背負(せお)うんだ。嬢ちゃんみてえな、ガキが。そんなもん、背負(しょ)わなくて、いいんだ。」
「……なんで。そんなこと、言うの?」
「ガキは、もっと、甘えるもんだ。ろくに、甘えられねえような、育て方をしやがった、ヤツらなんぞのために……なんでも、ねえ。」
「……おじさん?」
「なんでも、ねえ。オレは、なんも、知らねえ。」

 木こりは背を向け、森に向かって歩き去る。
 少女は木こりの、背中を見つめる。

(……よく。わから、ない)

 森から、木こりが木を切る音が、響き出す。
 少女は、素振りを再開する。


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