暁 〜小説投稿サイト〜
DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 五章
五章 導く光の物語
5-08広がる世界
[2/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
せながら、目に焼きつくような印象を残す。

 どの瞬間を切り取っても、完成された絵画(かいが)のように美しく、それでいて絵画では決して(あらわ)せない、躍動(やくどう)

 人々は、少女も、全ての瞬間を見逃すまいとするように、(まばた)きを忘れ、見入(みい)る。


 永遠(えいえん)のような、一瞬(いっしゅん)のような時間が過ぎ、笛の()が、(まい)が静かになり、やがて、終わる。

 マーニャが動きを()め、剣を下ろし、優雅(ゆうが)一礼(いちれい)する。

 顔を上げ、観客を見回し、微笑(ほほえ)む。


 歓声が、()()こる。

 少女は言葉も無く、立ち尽くす。

(……これが。本物の、踊り手の、踊り。……すごい。)

 以前にここで、女性たちが踊るのを見たときは、楽しそうとは思ったが、それ以上に心を動かされるものでは無かった。
 そのときとは全く違う、今のこの感覚。

 ただ美しいと思うだけではない、感情を強く()り動かされる、なにか。
 知っていれば、感動という言葉で表現したであろうもの。

 ひたむきに、ひたすらに、修業の日々を送ってきた少女が、初めて味わうものだった。


 マーニャが愛想(あいそう)を振りまき、投げ込まれるおひねりを拾う。

「おう、嬢ちゃんも拾ってくれ」
「……」
「おい、嬢ちゃん?」
「……」

 返事をしない少女に怪訝(けげん)な顔をしつつ、肩を(つか)()する。

「おい。どうした」
「……マーニャ。」
「どうした?嬢ちゃん」
「……すごかった。」
「おう。ありがとよ」
「本当に、すごかった。」
「一応、これでメシ食ってるからな」
「本当に、本当に。すごかったの。」

 想いを(あらわ)す言葉を、うまく見つけられない。

 もどかしそうに、必死に訴える少女の頭を、マーニャが()でる。

「もっと早く、見せてやりゃ良かったな」
「また、見たい。」
「おう。近いうちな」
「うん」
「とりあえず、一緒に拾ってくれや」
「うん。わかった」

 無意識に、道具袋の紐を強く握りしめていた手が、固まっている。
 なんとか指をほどき、握ったり開いたりを()り返して、感覚を取り戻す。

 マーニャが再び愛想を振りまき、三人でおひねりを集める。
 アンコールを求める観客を、笑顔でやりすごす。
 アンコールは無いと(さと)った客は、徐々に散って行く。
 踊りを求めてきた女性は、感激のあまり座り込んで涙ぐみ、動けずにいる。

 少女は集めたおひねりをマーニャに差し出し、押し返される。

「これは、とっとけ。()(づか)いだ」
「いいの?」
「おう
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ