第1話 遭遇
[4/5]
[1]次 [9]前 最後 最初
「・・・・・・・・・」
それを聞いた男は目を見開いたかと思うと、肩を小刻みに震わせ始めた。
顔を下に向けた所為で、表情を伺う事が出来ない。
「あの、お客さん?」
それを体調の悪化と思ったのか、カウンターから出てきた五代が男の側に立ち肩を叩こうとして。
「ティンときたああああああ!!!」
驚かされた。
立ち上がった男が、五代に向き直る。
そして男は鼻息荒く、先程よりも力強い口調で五代に詰め寄った。
「君は、プロデューサーをやってみる気は無いかね?」
「プロデューサー・・・・・ですか。あの、失礼ですが貴方は・・・」
「おお、これは失礼。紹介が遅れてしまったね。
私は・・・・・・こういう者だ」
懐から名刺を取り出し、五代に手渡した。
五代は名刺を受け取ると、すかさず其処にある文字に視線を滑らせる。
「えっと、CGプロダクション社長。高木順一郎・・・・・・社長さんだったんですか!
凄いじゃないですか!」
文字を確認し、五代は目を輝かせて高木を見た。
其処に媚びや好奇の色は無い。
純粋な尊敬の眼差しだった。
「いやいや、そう凄い物では無いよ。
部下に仕事を任せてこうして暇潰しに来ている只の道楽爺さ」
「けど、やっぱりそういう仕事をしてるって、凄く素敵な事ですよ。
それで、プロデューサーをして欲しいって言うのは・・・・」
「ああ、それなんだがね、君には彼女達を支えて貰いたいのだよ」
「支える・・・・・・プロデューサーとしてって事ですか?
でも俺、音楽なんてそんなに詳しく無いですよ」
精々が、ストンプを出切る位だ。
そんな素人に毛が生えた程度の人間を、態々選ぶ理由が解らなかった。
「勿論ソレもある。だが君には精神的にも支えて貰いたいのだよ
私もこの業界には長く居る、夢破れ、去る者を多く見てきた。
才能の有無。努力の不足。仲間同士の不和。
様々な理由があったが一番多くあったのは第三者の悪意による物だった
そしてそういった者は・・・・・決まって笑顔を失くすのだよ」
「・・・・・・・・・」
聞いて。五代は、顔を顰めた
同じ人間同士、きっと分かり合えない筈など無いのだ。
ソレが、どうして仲良く笑顔を振り撒く事が出来ないのか。
それが、五代には解らなかった。
「君にはそういった悪意から、守って欲しいのだよ。彼女達の笑顔を!」
五代が返事をするよりも早く、高木は五代から離れた。
膝を着き、地に手を付ける。
何をするかが解り、止めようとした五代だったが、ソレよりも早く高木が捲くし立てる。
「君が冒険が大好きで、一定の箇所に止まれない人間だという事も知っている!
しかしそれでも声をかけたのは、君しか居ないと思っ
[1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ