第1話 遭遇
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、お。これはチョモラマンの近くの・・・・・」
「うん、登った記念に買ってきたんだ」
相も変わらず目の潰れるほどの深い笑みを浮かべたまま、五代は彼に仮面を手渡した。
指や掌に浮かんだ傷や凍傷が露になる。
「そうかー、遂に雄介もチョモラマン制覇したかー。
よし、それじゃあ今日は僕が若い頃チョモラマン制覇した話でも・・・・・」
それを、あえて聞き出そうとはしなかった。
冒険の凄まじさを、彼は知っているからだ。
だから、話すまでは聞かない。
彼は、そういった事が自然に出来る男だった。
いや、もしかしたら自分の事を話したいだけかも知れないが。
「それは・・・・・また今度ね。所で俺に会いたいって人は?」
長年の勘という奴だろうか。
殆ど反射的に流れを五代が遮った。
「おおそうかそうか、お客さんなら下に居るよ。
早く会いに行ってあげなさい。
いや、本当は言うつもりは無かったんだけどさ。
もうエベレストの話もチョモラマンの話もしちゃっててさー
あ、ちなみに実はエレベストじゃ無くて正しくはエベレストって言うって知ってた?
いや間違い易いんだよね、雄介位の歳の子はね。他にもさ・・・・・・」
一気に捲くし立て、彼が気が付いた時には五代が階段を下りた後だった。
「・・・・・・・・・・・・相変わらず、急いでるな」
後にはおやっさん。飾玉三郎と、仮面が残された。
嘆息し、右手に持った仮面に気が付いたのか、視線を落とす。
被ってみた。
近くの鏡を見た。
「・・・・・・・・・・・意外に、似合ってるな」
階段を降りて、先ず始めに目に止まったのは、カウンターに面した席で、一人この店――ポレポレ――特製のコーヒーを飲んでいる男性だった。
影で顔が良く見えないが、スーツをキッチリ着こなし、顔が見えないお陰か清潔感のある好々爺だった。
「こんにちは」
「む、ああ。どうも」
階段を降りきると、カウンターの向こうに立ち、五代は男に話しかけた。
見知らぬ男に話しかけられる事に、最初は怪訝な顔をした男だったが。
彼の笑顔を見た事と、カウンター側に立っていた事から安心したのか、直ぐに微笑で挨拶を返した。
そういった行動も、好々爺の印象を強める。
「あ、遅れちゃいましたけど。俺、こういう者です」
五代は懐から名刺を取り出し、男に手渡した。
其処には流れる様な字でこう書かれていた。
「夢を追い続ける男、2012の技を持つ男。五代雄介・・・・・・・おお! 君が!」
興奮の余りか、名刺を見ると立ち上がって興奮した顔付きで五代を見た。
衝撃に押された椅子が、地面と衝突し音を立てた。
「はい! はじめまして。それでどうしたんですか? 俺に会
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