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スペードの女王
第一幕その六
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ルマンは一人立っていた。
「三つのカードの秘密・・・・・・」
 彼は今聞いたそれを反芻していた。
「それさえあれば僕は大金持ちになれる。そして」
 彼が望んでいたのは資産だけではなかった。
「彼女も。その金で地位を得られたら僕は彼女に見合うことができる。そうだ、どうなんだ」
 彼は嵐の中で一人呟いていた。
「三枚のカード、全てはそこにある。彼女を僕のものに!」
 嵐はさらに強くなる。彼はその中で叫んでいた。
「嵐が何だ!全ては彼女の為だ!資産を得て彼女を!今僕は誓うぞ!」
 叫びながら空を見上げた。
「雷よ、雨よ、突風よ!彼女のを僕のものにする。さもなければ死だ!」
 今彼は誓った。その嵐に。これがゲルマンの全ての終わりのはじまりであった。
 リーザは邸宅に帰るとその中で詩を読んでいた。その隣には金髪碧眼の長身の美女がいた。彼女の従姉妹であるポリーナである。
 広々とした部屋であった。女友達が集まって歌や詩を楽しんでいる。リーザが呼んだもので彼女達は朗らかな笑みを作ってそこにいた。
「ねえリーザ」
 ポリーナが彼女に声をかける。皆安楽椅子に腰掛けてにこやかに笑っている。
「最近いい詩を見つけたのよ」
「どんな詩なの、ポリーナ」
「ええ、ジェコフスキーの詩なんだけれどね」
 彼女は言う。
「読んでみる?私はもう覚えたから」
「ええ。どんなのかしら」
「これよ」
 そう言って一冊の本をリーザに手渡した。リーザは早速それを読みはじめる。
「今はもう夕べの刻」
「雲の端は暗く染まり」
 ポリーナがそれに続く。
「塔を背に、夕べの光は失われていく」
「どう、いい詩でしょ」
「ええ。もっと詠んでいい?」
「どうぞ。リーザの声は聞きたいわ」
「わかったわ。それじゃ」
 リーザはそれを受けてさらに詠んでいく。
「水面に浮かぶ一条の煌きは空と共に消えかかる」
「かぐわしき香り、燦然たる木々より立ち昇る」
 またポリーナが続く。
「岸の傍ら、静けき中、水面に撥ねる水音の何と甘くそよぎわたる風の何と密やかなこと」
 最後の一行は自然と二人一緒になった。
「柳はたおやかに揺れ揺れる」
 詠み終わった。それからポリーナはリーザに問うた。

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