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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第十四話「チーム戦」
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軽な動きだ。


 避けながら時折精霊魔術を行使して距離を稼ごうとする。それをクレアも避けながらさらに追随。これでは限が無いな。


 それまで音もなく接近していた俺は『気殺の法』を解いて気配を晒す。クレアが俺の姿を認め、同時に少女も後ろの気配に気が付いた。


 振り返り際に精霊魔術が飛んでくる。それを屈んで避けた俺は伸び上がるように上体を起こして手刀を繰り出した。


「くっ」


 ギリギリ首を傾けて回避する少女。しかし、その背後にはクレアの鞭が迫っている。


「終わりよ!」


「しまっ――」


 炎の鞭は少女の背中を袈裟懸けに切り裂いた。


 試合終了を知らせる笛が異界の空に鳴り響いた。





   †                    †                    †





「ふむ、五対二の人数差に初めてのチーム戦で勝利か。まあ及第点といったところだな」


 試験が終わり、どこからともなく現れたフレイア先生が手元のボードに何かを記入している。


 初戦での勝利に喜ぶクレアの隣で俺は渋い顔でその言に肯定した。


「そうですね。今回は勝利という形で終わりましたがチームプレイは最後の挟撃だけで内容の殆どは個人戦。決して褒められた戦いではありませんでした」


「ほう。どうやらリシャルト・ファルファーは分かっているようだな。君たちの力は確かに強力だ。しかしそれだけではこの先、連携の取れたチームに勝つことは困難となる」


「なんでよ? 現に勝ったじゃない」


 その言葉が不満なのか頬を膨らませるクレアに先生は苦笑した。


「それは結果論だ。確かに今回は勝てたが次はどうなるか分からない。チーム戦を甘く見ないほうが良いぞ、クレア・ルージュ。個々の力は協力でも場合によってはその辺の雑兵たちに負けることもある。さながら、チェスのようにな」


 思うところがあるのか、押し黙るクレア。俺は目の前の先生に向き直った。


「ええ、その辺も理解はしているつもりです。まだ互いにチーム戦というものの経験が浅いのでこれから積んでいきますよ。それに二人だけでは流石に厳しいですからね、他のチームメイトも確保しなければなりませんし」


「そうだな。出来ることなら早々に動いたほうが良い。今回の【精霊剣舞祭】は五人チームでないと参加資格が貰えないからな」


「わかっているわよ」


「だと良いのだが」


 苦笑した先生は次のチームの名を上げる。俺たちはその場を後にして現実世界へと通じる〈門〉へと向かった。


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