暁 〜小説投稿サイト〜
SAO─戦士達の物語
GGO編
百十五話 殺人鬼、再来
[7/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ョウのHPを削りきるほどの物では無かったらしく、何事かを二人の間で話しているように見えた。しかし数秒すると……ナイフを持って、リョウは一気にフードの男に接近していく。その体を銃弾が二発掠め、一発が肩を浅く切り裂くがお構いなしに突っ込み、一気に青年は男との格闘戦に突入する。

「〜〜ッ」
自分の手の届かない場所で行われている、恐らくは誰かの命の掛かったその戦いは、見たことも無い程の真剣さと、少しの空恐ろしさに満ちていて、美幸は再び人知れず息を詰める。

『あれが……』
それはきっと、単純に、相手を殲滅する事のみを目的とした戦い。
其処に矜持や誇りは無く、目的は唯眼前の敵を消し去る事のみ。そんな戦い。

『あれが……本当の意味で闘ってる、リョウ……』
それを、初めて見た。
否、あるいは一度だけ見たかもしれないその姿、あの時は、背中だけを。そしていまは第三者の視点として。
今も規則正しく、一定のリズムで心音を刻む心電図の横で眠るリョウの姿を、美幸はちらりと見た。その頭の上に付いた、二重環状の機械をじっと見る。
アレがナーヴギアで無い以上、今、美幸と涼人を隔てる壁は本当に薄い一枚の空間の壁だけだ。あの機械を取り外してさえしまえば、彼は自分の元に戻って来てくれる事が確定しているのだから。
しかし……

『……違うよね』
それは、出来ないと分かっていた。
涼人が本気になって戦っている。美幸には逸れがどうしても必要な事なのだと、直感的に分かったからだ。だからこそ、美幸は開きかけた手を強く握り締め、その衝動を押し込めた。と、不意に、鈴の鳴るような声が響いた。

『ねーね、手を……叔父さんの、手を握ってあげて下さい』
「え……?」
「ユイちゃん……?」
それは、アスナの携帯端末の中に居る、ユイの声だった。聞き返した二人の言葉に、ユイは返す。

『アミュスフィアの、体感覚インタラプトはナーヴギアほど完全では有りません。手を握ってあげれば、ねーねの手の暖かさなら、叔父さんに届くはずです』
「手を……」
ジッと握りしめた自分の手を眺め、アスナを見る。
アスナが微笑みながらコクリと頷き、釣られるように頷き返した。

リョウの横の椅子に座ると、ベッドの上に乱暴に投げ出されたリョウの手を、美幸はじっと見る。

実を言えば、今までに一度として、美幸は涼人と手を握った事が無い。……いや、正確には、小学校の頃分かれて以来。というべきか。
理由は、多々ある。ただ最も多かったのは、何度か美幸と涼人が二人だけになった時、それを言おうとすると、決まって美幸が緊張でどもってしまい、言えなかったのだ。

『……不思議だね……』
そんな涼人の手を、美幸は両の手でそっと包み込む。

『いつもなら、あんなにドキドキするのに……』
余り
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ