暁 〜小説投稿サイト〜
スペードの女王
第三幕その三
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話

「素晴らしい、こんなワインははじめてだ」
「そうでしょう」
「では気持ちが落ち着いたところで。トムスキー」
「何だい?」
「どうだい、歌でも」
「今はちょっと」
 まずは断ってみせる。
「歌う気には」
「では君にもトカイを」
 チェカリンスキーがワインを出してきた。
「これでいいかな」
「仕方ないな。じゃあ」
「明るい曲を頼むぞ」
「公爵をにこやかにさせるような」
「よし、じゃあ」
 それに応える形で場の中央に出て来た。
「覚えたてだけれど」
「それでいいよ」
「はじめてくれ」
「よし」
 それを受けて朗々と歌いはじめた。
「若し可愛い乙女達が小鳥の様に空を飛んで木の枝に止まるなら」
「どうするんだい?」
「僕は枝になりたい。何千人もの乙女を枝に止まらせよう」
「おお、いいねえ」
「もう一曲」
 客達が囃し立てる。賑やかな歌に皆乗ってきていた。
「乙女達を枝に座らせて歌わせよう。巣を作らせてあげよう」
「寛大だね、また」
「君らしい」
「僕の枝は決して曲がったりしなったりしないから。そのまま彼女達を抱いて僕は永遠に幸せを味わうのさ」
「よし、乗ってきたぞ」
「じゃあ楽しくやろうか」
「公爵、どうぞ」
「うん、何をしているのかな」
 公爵は薦められた席に座りながらスーリンに尋ねた。
「ポーカーですよ」
「ポーカーなのかい」
「御存知ですよね」
 一応のいであった。
「こうしたところでははじめてだけれどね。結構好きだよ」
「それは何より」
「それでははじめますか」
「うん、まずは」
「おおい、ワインだ」
「ケーキを頼む」
 周りでは酒に美食が頼まれる。煙草の煙がくゆらぎ部屋の中を覆っていた。公爵はその中でカードを選んでいた。

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ