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スペードの女王
第三幕その一
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「そう、三だ」
「三なのか」
「よいな、ここまでは」
「ああ、覚えた」
 彼女を見て答える。
「そして最後だが」
「最後は」
「七だ、いいな」
「七か」
 ゲルマンはこの数字を呟く。
「間違っても他のカードは賭けないことだ」
「わかった、他は」
「特に」
「特に!?」
 ゲルマンは狂気に取り憑かれていた。その為ここで彼は間違えてしまった。
「スペードの女王は賭けるな」
「どうしてだ?」
「それが破滅の証だからだ。私の仇名でもあったそのカードだけはならない」
「それを賭ければどうなるんだ?僕は」
「完全な破滅だ」
 恐ろしい声であった。実に。
「そうか」
「だから。決して賭けてはならない」
「スペードの女王」
 それが頭に残る。これが破滅のはじまりであった。
「いいな」
「わかった」
 頷きはしたが心は虚ろになっていた。
「スペードの女王はだ」
「わかった、スペードの女王なんだな」
 賭けるべきか賭けないべきかもわかってはいなかった。
「それだけだ。ではリーザを幸せにするのだ」
「わかった、リーザを」
 ゲルマンはそれに応える。
「何もかもを僕の手に」
 伯爵夫人が消え去るのを見ながら呟く。既にその背中には破滅の黒い翼があることに気付かないまま。彼は一人呟いていたのであった。
 このペテルブルグという街はピョートル大帝が北極圏の湿地帯に築いた街である。港を得る為と西にいるスウェーデンへの対策、そして新しい西欧文化を取り入れた街を築く為であった。
 この街を築くのに多くの者が犠牲になった。極寒の北極圏に都市を築くのである。過酷な気候と労働、そして疫病により多くの者が倒れた。その為この街は人骨都市とも呼ばれる。屍の上に築かれた街だと言われている。

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