第二十六話 少年期H
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がないのはわかったから、結局なんなんだよ…」
「さり気なくひどいな」
うるせぇよ。言葉の最後らへんがちょっと涙声になりかけた。本当になんなのだろうか、このものすごい疲労感。こいつと遭遇してまだ1時間と経っていないって嘘だろ。
なによりこいつの考えが一向に読めない。なんでいつの間にか、俺のあだ名を決める流れになっているんだよ。
「いやね。君の名前を教えてほしいなぁ、っていう遠まわしな催促でした」
「わかるかァッ!? あと、お前が遠まわしを使うな! 全然やんわり包んでもいねぇよ!!」
えー、と不満そうに声を出すんじゃねぇ。というか催促ということは、さっきまで挙げられていたあだ名の候補は、こいつもないって思っていたってことかよ! あの3つの中ではまだスラりんの方が……とか考えてしまった俺の時間を返せェ!
「あ、そうか。名前を聞くなら自分からだよな」
「聞いてない。俺は聞いてない」
「俺はアルヴィンで、こっちのふよふよ浮いているのがコーラルって言うんだ。で、君は?」
「お前どこまでゴーイングマイウェイなんだよ」
俺は名前教えるとは一言も言っていないよな。間違いなく言っていない。なのになんでこんな流れになってしまっているんだ。……そうだ、別に言う必要なんてないじゃないか。こいつとはもう関わることもないんだし。
そうだそうだ、と納得し、俺は胸を張って宣言する。ずっとこの俺が振り回されっぱなしだと思うな。てめぇに名乗る名前はねぇ!
「はっ! なんで俺が自分の名前をお前に言わなきゃ――」
「じゃあゲレゲレで決定」
『おめでとうございます』
「エr…エイカだァッ!!」
もうこいつ嫌だ! なんで俺がこんな変なのに絡まれなくちゃダメなんだよ。こいつはこいつでなんか嬉しそうに笑っているし。一応名前……教えたことにはなるのか。だいたいなんで俺の名前が聞けただけで、そんなに喜んでいるんだよ。わけがわからない。今日はわからないことばかりが増えていく。
「ねぇ、エイカ」
「……なんだよ」
俺のことを笑顔で呼びかけてくるそいつ。本当にさっき初めて会ったばかりの他人だ。それなのに、なんでこんなに変な気持ちになる。むず痒いというか、忘れかけていた何かを思い出すような感じ。なんだったのだろう……これは。
「じゃあ、行こうか」
「……はい?」
「よし、返事はもらいました。それでは、レッツゴォー!」
いやいやいや。返事返したつもりは1つもねぇよ。あとなんで勝手に俺の手を握って、歩き出しているんだよ。思い出しそうだった何かは意識から吹き飛び、慌てて俺は止まろうとする。だけど俺のその願いは叶わず、ずるずると引き摺られるままに歩いてしまっていた。
何度も抜け出そうとした路地裏から
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