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SAO−−鼠と鴉と撫子と
31,光と闇の世界で
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。それがカーディナルには調整しようもない問題だからGMが来るまで君を捕まえておくことにしたんだ。そう、茅場明彦が来るまではね」

茅場明彦。その名前を聞いて一瞬だけ世界が点滅した。
あいつが、来る?そういうことか。

「君たちにメリッサを渡して正解だよ。あれの機能はイレギュラーだ。あとは、僕たちの予想通りに茅場明彦が君を解析すれば、僕たちは彼の居場所を調べることができる」

「……おまえ、最初っからそれが狙いか!!」

「すまない。僕たちのプランでは君のゲームクリアが保険のはずだったんだ。結果として君に一番危険な役割すら押し付けてしまった」

俺の声は聞こえていない筈だけど、言葉を予想していたのだろう。謝罪には本心と確かな決意が滲み出ていた。

つまり、こういうことか。
SAO事件が始まって外部からの救出は困難。茅場明彦の居場所も突き止めることの出来ない。
そこで、菊岡はゲームへとログインさせた俺達の使命は2つあった。
表向きはSAOの経験者を投入することでゲームクリアを促すこと。ゲーム内側からの状況打開。
そして、裏の目的は俺達にゲームでのイレギュラーなバグを引き起こさせること。
どういう仕組みかは知らないけど、メリッサにある見修正のバグを使えば使用者――つまり俺がカーディナルによって隔離措置を食らうことになる。
それを餌にして茅場晶彦を呼び出し、その居場所を探ること。
居場所さえわかれば、ゲーム外側の膠着状態は一気に崩れ去る。茅場晶彦の逮捕が可能になるからだ。

そこまでわかった時、上からの声はトーンを変えた。
「それはそうと、万が一に備えてもう一つ保険をかけておくよ。いいかい、ユニークスキルが35層に隠されている。方法はーーー」
耳寄りな情報を菊岡がはっきりと告げる。

しっかりと覚えようと復唱しようとした時、世界が揺れた。
ノイズのようなドットズレがおこり、魔術めいた深紅のヘックスが周囲の空間を溶かしていく。

「アクセスを確認。トラフィックの取得急いで!!」
バタバタとマイクの音が騒がしくなる。来たか……俺の方にも視覚的なエフェクトを貰えるとは、結構な太っ腹だ。

「……嘘だ。このIPはSAOサーバーのものと一緒じゃないか。IPの偽造でもない……?じゃあこれは本当に内部から……」

菊岡の呟きを聞く余裕は俺にはなかった。赤い靄はとうとう人の形へと姿を変えつつあるからだ。
皮膚は見えない。真紅のローブに身を包み、手にはやや厚手と思える純白の手袋。
フードの中にあるはずの顔はなく、代わりに真っ暗闇がぽっかりと広がっている。

俺は、本能的に飛び出していた。勝てるはずもない。だけど、ここでこいつを殺せればそれでこの世界は終わるんだ。
振り下ろそうとした拳は、しかしその手前で勢い
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