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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第二十九話 流れ出す前兆、軍靴の灯火
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すけど、そう思い通りにはなりませんからね』

螢は驚愕を顕にし、ザミエルは歓喜に奮え、カリグラは策が成った事に顔を綻ばせた。

「ハッハハ、ハハハハ―――!!さあ戦争を再開しようじゃないか!!」

雷鳴が轟く。魂を形成し、目の前に現れる金髪碧眼の一人の女性。蒼く、どこまでも澄み切ったその相手にカリグラは剣を再び構えなおす。
カリグラにとって確証などありはしなかった。彼女がこの場に現れる可能性など一割にも満たないであろうことすら理解していた。ラインハルトの顕現による揺らぎなど彼には見極めれることは無い。
だが、彼はあらゆる推測、予想を無視してでも確信していた。奪い去ったアルフレートの魂の記憶と自らが僅かな時間とはいえそれを持っていたが故に、それは起きるであろうと。

「―――ベア、トリス」

螢は呆然とどこか現実味のない光景に打ち震えながらもポツリとそう名前を呼んだ。

「はい、ベアトリス・ヴァルトルート・フォン・キルヒアイゼン、義妹の危機を救うために、そして頭の固い上司を部下として正すためにやってきました!」

カリグラはこの場で下策をもって上首尾を為した。彼女が目覚めなければ例え螢を取り込んだとしてもザミエルに届くことは無かっただろう。彼は目的を履き違えてなどいない。螢を殺し、その力を奪い取る。そのための時間稼ぎとしてベアトリスを宛がい、そしてその彼女すら斃し奪う、そうやって得た力でザミエルを屈する気なのだ。
四人は互いに武器を構え、己が戦場に立つ。ゆえ、少なくともこの戦争は些か以上に長引く事となるだろう。

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