7部分:第二幕その二
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「わかりました。では」
アビガイッレは自分の身体を巫女長に近付けてきた。そして囁く。
「私はこれより」
「はい、イシュタルの御加護を」
アビガイッレはそのまま巫女長と交わった。これで彼女は王の根拠を得た。だがそれはまだ秘密のことであり彼女は影の中で動きはじめただけであった。
王宮の王の居間の側である。右手には扉が回廊に続きこの宮殿の巨大さと壮麗さを教えている。その中で今ザッカーリアが教典を手にする従者と共にいた。
「あの祭司長」
従者が不安げな顔で彼に声をかける。
「あまり王宮の中を歩き回られるのは」
彼を気遣っているのだ。王宮の中でもしきりにヘブライ以外の神々を批判するので蛇蝎の如く嫌われているからだ。だが本人はそんなことは全く意に介してはいなかった。
「構わん」
彼はそう言ってがんとして聞き入れない。
「これもまた試練なのだからな」
「試練ですか」
「そうだ」
彼は言い切る。
「だから恐れることはない。よいか」
「はあ」
従者に対して語りはじめた。
「神はヘブライの者達を救い出し、一人の不埒な男の闇を切り裂く為に私をこちらに導いて下さったのだ」
「神がですか」
「そうだ、それでどうして恐れることがあるのか」
「それでもですね」
従者は困った顔で彼に述べる。
「命を狙われていますよ」
「そんなことはわかっている」
「ではどうして」
「安心せよ。私は神に護られている」
あくまで強固な信仰がそこにあった。
「今の私の言葉は神の御言葉。それで異端の者達を撃つのだ」
「異端の者をですか」
「このバビロンを見よ」
そう言って宮殿のあちこちを指し示す。
「腐敗と堕落に満ちている。それに気付くであろう」
「ええ、まあ」
彼等にとっては他の神々への信仰とそれに捧げられる富は全てそうなのだ。ザッカーリアはそれに気付かないだけであるのだが。しかし今の彼にはそれを言っても無駄であった。
「では行くぞ」
「あっ、待って下さい」
ここで従者が彼を止めた。
「どうした?」
「誰か来ます」
「誰だ?」
「イズマエーレ将軍ですね」
「あの裏切り者がか」
ザッカーリアはその名を耳にして急に不機嫌な様子を見せてきた。
「バビロニアの者達の軍門に下り私を殺しに来たか」
「まさか」
従者はそれは否定した。彼はイズマエーレを知っていた。だからそのようなことをする男ではないとわかっていたのだ。
「そんなことはありませんよ」
「果たしてまことか」
「同胞ですよ」
そう彼に言った。
「同胞を信じないでどうするのですか」
「だがあいつは」
ザッカーリアの言うことにも根拠があった。彼はそれを主張してきた。
「あの時我々を裏切りそして今ここに連れて来られているのだ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ