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とあるβテスター、奮闘する
裏通りの鍛冶師
とあるβテスター、人捜し
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攻撃が通ってしまうことだ。
普通に考えれば、悪いことではないのだろう。
MMORPGにおいて、火力が高ければそれに越したことはないのだから。

ただし。
シェイリの場合、なまじ攻撃が通ってしまうだけに、敵の鎧や盾などの硬い装甲もお構いなしにぶった斬ってしてしまう。
本来であれば鎧の隙間などの装甲の浅い部分を狙うべきなんだけど、両手斧の分厚い刃でそれを行うのは難しい。
そのため、彼女は『防御の上から最大威力の攻撃を叩き込む』という力任せな戦法をとっている。
当然、敵の装甲と衝突することが多くなるため、武器の耐久度も著しく低下してしまうというわけだ。


そんなわけで。
僕たちはアルゴの情報網を使い、『訳有りプレイヤーでも製作依頼を請け負ってくれて、尚且つ腕のいい鍛冶師』を捜してもらうことにした。
といっても駄目なら駄目で、店売りの武器をNPCで強化して、いい武器がドロップされるまでの繋ぎとして使っていくつもりだった。
正直な話、そんな都合のいい人間がいるわけがないと思っていたからだ。

……ところが。
どうやらアルゴの情報網には、その『都合のいい人物』の情報がしっかりとヒットしていたらしい。
ただし、まだ噂話の域を出ていないという注釈付きで。

昼の12時から15時までの三時間の間だけ、ここ第17層主街区『ラムダ』の裏通りに、相当に質のいい武具を取り扱う露店商がいる。
偶然その露店を見かけたプレイヤーによると、武具の製作者名は『Lilia』。
名前から推測するに、女性の鍛冶師だろうという話だ。

その後も裏通りを拠点とするプレイヤーが何人か目撃しているらしく、扱っている武具の質の良さと、女性プレイヤーが作ったものということも相まって、一部の間では有名な店となっているらしい。
……だけど、ここにもまた問題がひとつ。
露店で武具を販売しているのがリリア本人ではなく、非常に無愛想な男性プレイヤーなのだそうだ。
客を相手に積極的に商売する様子もなく、更に製作者のことを聞こうとすると激怒する。
リリアに店番として雇われただけなのか、それとも彼氏か何かなのか。
その辺の真偽も不明であり、ミステリアスな武具屋としてマニアに人気らしい(マニア?)。


「まあ……、ここで商売してるくらいだし、僕たちでも大丈夫だよね」
わざわざ裏通りで商売しているということは、恐らくリリアは訳有りプレイヤーに対する偏見は持っていない。
もしくは、彼女自身が訳有りという可能性もある。
そんな相手であれば、僕たちのようなプレイヤーからの製作依頼も受けてくれるだろう。

アルゴの助手(という名の使いっぱしり)としての僕の仕事は、噂の真偽の確認。
鍛冶師の情報を無料で提供する代わりに、彼女がどんな人物なのかを確かめてきて欲しい
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