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ナブッコ
6部分:第二幕その一
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「王座は私のもの。そして」
 彼女は同時に別のものも見ていた。
「あの人も。全てを手に入れる」
 今ここに決意していた。
「今までそれを隠していた父上も、そして私の王座を阻む場所にいるフェネーナも許しはしない。全ては」
 復讐と粛清、それもまたその目に宿っていた。
「私自身の為に。今こそ剣を持つ」
 全てを決意した。そしてその羊皮紙を破り捨てるとその場を後にした。そのまま彼女はバビロニアの神々を祭っている祭壇に向かった。
 そこではイシュタルが祭られている。バビロニアの愛と戦いの女神である。美しく、そして同時に凄惨な性格をしている。愛を持つと同時に血をも欲する神であった。
「王女様」
 その祭壇の前でイシュタルの巫女の一人に声をかけられた。若い美しい巫女であった。
「どうされたのですか、今は」
「巫女長はいるか」
 アビガイッレは彼女に問うた。
「巫女長ですか」
「そうだ、話したいことがある」
 彼女はそう述べた。
「どうなのだ」
「ええ、こちらに」
 彼女はアビガイッレの剣幕に怖れを抱きながらも答えた。
「おられますが」
「そうか。では中に入らせてもらう」
 彼女は言った。
「よいな」
「あの」
 巫女はおずおずとした様子でアビガイッレに問うた。
「一体どの様な御用件でしょうか」
「少しな」
 アビガイッレはここで微かに笑ってみせたがそれは酷薄な色があった。
「悩みがあってだ」
「悩み、ですか」
「どうしてもそれを聞いて頂きたいのだ。それでよいかな」
「はあ」
 彼女はそれに答えた。
「それでしたら」
「うむ」
 アビガイッレは重厚な青銅の扉を開けて祭壇の中に入った。そこの奥には美しくも猛々しいイシュタルの巨大な像が置かれていた。剣と鎧で武装したその姿は何処か戦場にいるアビガイッレを思わせるものであった。
「おお、これは」
 彼女が祭壇の中に入ると声がかけられてきた。アビガイッレがそちらに顔を向けるとそこには三十代前半の着飾った妖艶ささえ漂う女性がいた。その厳かな服装から彼女が巫女長であるとわかる。
「王女様、ようこそ」
「巫女長、お元気そうですね」
 アビガイッレはまずは彼女に顔を向けて微笑んだ。
「暫くぶりです」
「左様で。どうしてこちらに」
「はい」
 アビガイッレの顔から映見が消えた。
「実はですね」
「ええ」
 言葉まで深刻なものになってきているのがわかる。巫女長はそんな彼女に正対していた。
「まずは御聞きしたいのですが」
「何でしょうか」
「貴女は私の味方であられますね」
「無論です」
 巫女長はむべもなくそう答えた。
「貴女こそが次のバビロニアの主。そうイシュタルも申し上げております」
「そう、イシュタルが」
 彼女はここでイシュ
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