4部分:第一幕その四
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っている」
「何だと?」
「見ろ」
そう言って側にいたフェネーナを後ろから羽交い絞めにした。それからその首筋に短剣を突き立てる。
「こういうことだ。これでわかるか」
「何ということを」
「貴様、それが人間のすることか」
「何とでも言え」
バビロニアの兵士達の非難は彼の耳には入らなかった。
「少しでも動いて見よ。この娘の命はないぞ」
「御父様、私は」
「フェネーナよ」
ナブッコは怒りを必死に抑えた声で述べた。
「安心せよ。若し御前が殺されたならば」
声は怒りを抑えていた。しかしその目は別であった。
怒りに燃える目でザッカーリアを見据えている。燃えるような光であった。
その目で彼に対して宣言する。怒りの声を。
「愚かなヘブライの者共の命を餞別にしてやろうぞ」
「できるものならしてみよ」
ザッカーリアはまだ退きはしない。
「できるものならな」
「そうだ、我等を傷つけることは出来ない!」
神殿の中に逃れていたユダの民達が出て来た。そして神殿の上から叫ぶ。
「この娘が我々の手にある限り!」
「バビロニアの野蛮人達よ!娘の命が惜しければすぐに立ち去るのだ!」
「ふざけたことを言うな!」
バビロニアの兵士達はそんな彼等に対して言い返す。
「王女様を盾にするとは何と卑劣な!」
「貴様等に恥はないのか!」
「ええい、黙れ!」
ザッカーリアは彼等の抗議をつっぱねた。
「全ては神の為だ!この神殿は渡さぬ!」
「あくまで神か」
「そうだ!」
ナブッコに対しても言う。
「御前になぞこの神殿を明け渡すか!」
「神は我等を護って下さる!」
「では聞こう」
ナブッコはそんな彼等に対して問うてきた。
「何をだ?」
「御前達の神がそこまで偉大なのならどうして私がここまで来たのだ?」
「何だと!?」
「私は御前達の神に戦いを挑んだ。だが御前達の神は私の前に姿を現わしたか」
ヘブライの者達を見上げて問う。見上げてではあるが完全に彼等を圧倒していた。これこそが王の威厳なのであろうかと思わせるものであった。
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