3部分:第一幕その三
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ます。その私の愛する者になれば」
それが言葉の意味であった。
「そうすればユダの民も生き長らえ貴方もまた名誉を手に入れられるのです。さあ」
そして誘う。
「私と共に。愛しい人よ」
手を差し伸べる。その手は彼に向けられていた。
「今こそ私の側へ」
「しかし」
だがイズマエーレはフェネーナに顔を向ける。フェネーナは何も言えず俯いているだけであった。
「私は」
「私はどうすれば」
フェネーナは今自分が何を言うべきなのかもわかりかねていた。神殿に近付いてくる兵士達の咆哮と闇夜の中に燃え盛る炎の中で身体を震わせていた。
「その娘が何だというのでしょう」
アビガイッレはそんなフェネーナを見て嘲笑していた。
「問題にならないではありませんか。さあ」
そしてまたイズマエーレに手を差し伸べる。
「私の下へ。そうすれば貴方は全てを」
「しかし私は」
「ああ、どうすれば・・・・・・」
差し伸べるアビガイッレと戸惑うイズマエーレ、彷徨うフェネーナ。三人が神殿の上と下でそれぞれの姿を見せている時にバビロニアの将兵達の歓声が聞こえてきた。
「あれは」
「まさか」
イズマエーレとフェネーナはその歓声の方に顔を向けた。するとユダの兵士達が命からがらといった様子で神殿のところにやって来た。多くの者が傷つき戦友達を肩に担いで血塗れの姿でやって来た。
「どうしたんだ、これは」
「将軍・・・・・・」
兵士の一人が駆け寄ってきたイズマエーレに顔を向けた。その額から血が溢れ出ている。
「も、もう駄目です」
「どうしたというのだ」
「敵がすぐそこまで」
「いや、それならまだ」
怯えるには及ばないと言おうとした。だが。
「敵の王が来ているのです」
「何っ!?」
この言葉には流石に言葉を詰まらせてしまった。
「今何と言った」
「バビロニア王が来ています」
「ナブッコ王が。すぐそこまで」
「何だとっ、何という速さだ」
「私はほんの斥候に過ぎないのです」
アビガイッレは轟然と胸を張って述べた。
「ですが貴方とユダの者達を救うことはできるのですよ」
「しかし私は」
「さあ、時間はありません」
アビガイッレの声が迫る。
「返事は」
「くっ・・・・・・」
「来たぞ!」
「逃げろ!」
ユダの兵士達は必死に神殿へと逃げていく。彼等が命からがら神殿に逃げ込むとそれを待っていたかのようにバビロニアの兵士達が姿を現わした。
「さあ王よこちらへ!」
「今こそ勝利を我等に!」
「父上!」
アビガイッレは後ろを振り向いて明るい笑顔を見せた。
「さあこちらへ」
「おお王女様」
「貴女もこちらでしたか」
「そうです、父上の為に道を開いていました」
兵士達に傲然した態度で述べた。さながら王で
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