ファントム・バレット編
ファストバレット
ISLラグナロク
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「お兄様」
朝食を終え、今夜の本戦前にあれこれ用事を済ませておこうと自室に向かう途中、背後から沙良の呼び止める声が聞こえた。
「どうした?」
「これを」
沙良がスッ、と差し出したのはごく一般に普及している薄型タブレット。紙媒体の情報紙に代わって普及しつつある電子ペーパーだ。表示されている記事には【ガンゲイル・オンラインの最強者決定バトルロイヤル、第3回《バレット・オブ・バレッツ》本大会出場プレイヤー30名決まる】とあった。
「………ふむ?」
「とぼけないで下さい」
沙良にしては珍しくしつこい追求に俺は早くも白旗を上げることにした。まぁCブロック優勝者の欄に堂々と【Ray(初)】ってあるしな。
「いや、な。別にALO辞めたとかじゃないぞ。単純に趣味だよ。うん」
「もちろん、お兄様がGGOもやっていることは存じております。しかし、理解できません」
沙良は一歩近づきながら俯く。
「……お兄様は、その腕になってから戦いの場に出ることはなくなりました。……嫌っていたあの場所に戻ることもなくなったのに……。なぜ……!!」
「……………」
俺は今まで気にしていなかった事に気がついた。
先代は俺をあくまで『兵士』とするために拾ったのに対して、当代の当主、冬馬が沙良を養子にしたのは『普通』の意味だ。
『戦うために』育てられた俺とそうでない沙良。似ているようで根本的に『作り』が違う、彼女に螢の心情を汲み取れる道理は無かった。
しかし、螢はそれを沙良に諭そうとはせずに、ただ微笑しながら沙良の頭を撫でた。
「大袈裟だよ、沙良。GGOはあくまで『ゲーム』だ。SAOでない以上、ゲーム内で死ぬことはない。……沙良、俺達がVRMMOをプレイする上での義務は何だ?」
「……『楽しむこと』です」
「そう。俺はただ《ガンゲイル・オンライン》という世界を『楽しむんで』いるだけだよ」
そう言って沙良の真紅の瞳を見つめる。すると沙良は予想通り頬を染めて顔を背けると、分かりましたと言うと、足早に去っていった。
「……ごめんな」
その背中にポツリと呟くと、俺は出掛ける支度を始めた。
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午後6時。
本番は8時からなので2時間の余裕はあるが、俺はいつもより少し速いペースで病院の駐車場に乗り付けると、間に合ったことに安堵のため息を吐く。
数時間前まで融通の利かない諸々の用事を片付けていたと思えば、今度は力がモノを言う、闘いの世界だ。
「んっ……」
ヘルメットを脱いで体を伸ばすと緊張していた筋肉がほぐれていく。最後に大きく息を吐くと、今度はゆっくりと病院
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