第十八章
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読しながら、ずっと思い出してる。
ご主人さまのことを、何度も何度も思い出す。繰り返し、繰り返し。
でも、おかしいの。
思い出すたびに、違う顔をしている。髪は黒だったかな、それとも、うすい茶色だったのかな。目は…深い黒だったような、こげ茶色だったような…。いやだ、思い出せない。どれが本物のご主人さまだったかな…。
名前も、アイラだったり、スギタだったり、スギラだったりする。いやだ、どれが本当の名前なのか、全然分からない…。
人って死んじゃうと、その記憶も少しずつ死んでいくのかな…だから私は、ご主人さまのことをよく思い出せないの?こんなに好きだったことも、こんなにあいつらを憎んでいることも、全然消えてくれないのに。
この気持ちだけ残して、あとは全部消えていくのかな……
慌てて、生きてたときのご主人さまの画像を探す。…でも、ない。あの小さいパソコンに、置いてきちゃった。そしてパソコンはオフラインになってる。もう、私を受け入れてくれない。
でも、もういい。この墓標を花で埋め尽くしたら、私も消えるんだから。
――あれ?今モニターに、ご主人さまに似た人が映った。
確かめたいけど、わからない。だってこのモニターじゃ、網膜識別が出来ないもの。
それに、ご主人さまは死んだ。私の前で息絶えて、ばらばらにされた。だからあれがご主人さまのはずがない。
――本当に?
――本当だよ、死んだんだから
――でも、それは本当にご主人さま?
――悲しかったでしょ、憎かったでしょ。だから、ご主人さまだよ
――そう…でも、それならば
なんで私は、ご主人さまを思い出せないの?
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