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くらいくらい電子の森に・・・
第十八章
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――会社が関わっている事実だけを、なかったことにする方法。

…たしかに、ある。たった一つだけ。
死体を隠すとか、犯人をでっちあげるとか、そんな付け焼刃な方法じゃない。死体は晒し、事実だけを隠すのだ。
でも決して許されない方法。もし地獄なんてものが本当にあるとしたら、そこに100回堕ちても勘弁してもらえないだろう。

「…このまま、中央制御システムを暴走させるつもりなんだろう」

思わず、口に出してしまった。紺野さんが咄嗟に振り返った瞬間、伊佐木は滑るように柚木の背後に移動し、首筋にナイフをあてた。…笑い皺一つ、動かさずに。
「柚木ちゃん!!」
「…正解だよ、筋がいいじゃないか」

――信じられなかった。

柚木が陥っている状況が信じられなくて、思わず手を伸ばした。すると柚木の首にあてられた刃が、より深く柚木の喉に食い込んだ。柚木がわずかに身じろいで、手を下ろした。…僕も、手を下ろすしかなかった。
「…自分が何しようとしてるのか、分かってるんですか」
かろうじて出した声は、かすれていた。口が渇いて、声が震えた。
「沢山の人が死ぬかもしれないんですよ…!」
「木の葉を隠すには、森の中。烏崎達は、システム暴走の、最初の犠牲者として処理されるだろうね」
そう言って笑い皺を一層深めた。ごく自然に、天気の話でもするみたいに。
「犯人は、MOGMOG開発室責任者。リストラを根に持ち、病棟を巻き込んだサイバーテロに及んだ。証拠は、あり余っているね。…さっき、データを持って逃げた自転車の青年には、追っ手をつけたよ。捕まるのは、時間の問題だ」
「えっ…伊佐木さん!?…なに、言ってるんですか…!?」
八幡が、青ざめた顔を震わせて呟いた。
「なんで…そこで紺野さんが出てくるんですか!?」
大粒の涙をぼろぼろこぼして、叫んだ。伊佐木は眉一つ動かさずに聞いている。
「最近の伊佐木さん、おかしいです!…紺野さんはみんなの暴走を止めようって頑張ったのに…この事だって、なにも紺野さん1人のせいにしなくたって、丸く収める方法はあるはずじゃないですか!!」
…そう。こんな大量殺人を見殺しにするよりも、はるかにリスクが低い方法はある。

――『死人に口なし』だ。

紺野さんを恨むあまり暴走した烏崎が、周りを無理やり巻き込んで嫌がらせを行なった結果とでもすればいいじゃないか。少なくとも、死骸の山を築きあげて烏崎達の犯行を埋めるよりは、はるかにまっとうな方法だ。
「烏崎さんはかわいそうだし、私も…共犯の扱いになるかもしれないけど、でも伊佐木さんにこんなことさせるくらいなら、警察に捕まったほうがマシです!!」
伊佐木の眉が、少し下がった。
「愚かだね、君は。…その方法では、事実を知っている人間が残ってしまうだろう?いけない、いけ
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