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『もしも門が1941年の大日本帝国に開いたら……』
第二十話
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と日本酒であったりする。
「如何でしたかな殿下?」
「……言えるのは貴国が帝国より遥かに上だと言う事です」
今村中将の言葉にピニャはそう素直な感想を言った。今村中将は特地に戻ってきたピニャ達に対して日本がどれ程の戦力があるかを知るために特別観閲式を敢行したのだ。
この観閲式には五個師団、一個砲兵大隊、三個戦車連隊、陸海航空隊が参加してピニャ達の肝は相当冷えたものであった。
「(……これを見て確信した。ニホンと講和しなければ帝国は滅びてニホンの物となる……)」
この時、ピニャの脳裏にはボロい服でツルハシを持って働かされている自分やボーゼス、ハミルトンの姿が浮かんできた。
「(何としてもニホンと講和をせねば……)」
ピニャは菅原から貰った捕虜の翻訳書を持ちながらそう思った。そしてピニャは直ぐに帝都に戻って議員達と接触するのであった。
それから数日後、今村中将は一人のダークエルフと面会していた。
「……つまり、貴女の故郷が炎龍によって滅びようとしているので助けてほしいと?」
「その通りです」
今村中将の問いにダークエルフ――ヤオ・ハー・デュッシはそう頷いた。
「我々も炎龍の退治は検討しています」
「そ、それでは……」
「だが場所が悪いのです」
今村中将はそう言って地図を指指した。
「貴女の故郷はシュワルツの森ですが、そこは帝国との国境を越えたエルベ藩王国なんです。軍が国境を超える意味は語らずともお分かりになりますな?」
「そ、それは……」
今村中将の言葉にヤオは言葉が詰まった。
「た、大軍でなくても良いのです。茶と草の人……数十人程だと聞き及んでいます。その人数なら軍勢とは言えないはず……」
「滅相もない。そんな人数で危険な炎龍と相対させるなど部下を死地に追いやるも同然。自分にはそのような命令を下す事は出来ません」
いくら大日本帝国軍であっても兵士達には家族や妻、両親がいるのだ。無理矢理死なせるわけにはいかない。
ヤオは両手で顔を覆ってただ声を殺して涙を流していた。涙は掌から手首へと伝わり、そのまま肘へと流れ落ちていく。
「くふぅ……」
漏れた嗚咽に周りにいた参謀達も重々しい空気と痛ましさで黙りこんでいた。
「……ですが」
その時、今村中将が口を開いた。
「我々は内地から炎龍撃滅の命令が来ております。取りあえず使者をエルベ藩王国に出して自国内の通過を認めてもらうようにしましょう」
「それでは……」
「我々の戦力が整い次第、炎龍の撃滅を開始します」
その言葉はヤオにとって心が救われた瞬間であった。
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