14部分:第四幕その一
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ら仕方がない」
「はあ」
「覚えておくがいい。あれがヘブライの言葉だ」
そして言って聞かせる。
「最初は何も思いはしなかった」
今聴こえてくる歌声を耳にしながら彼に語る。
「だが今は」
「違うと仰るのですね」
「そうだ。ここまで美しいとはな」
彼は感慨を込めて述べる。
「思いもしなかった」
「そうだったのですか」
「うむ、最初はヘブライの者達なぞ歯牙にもかけはしなかった」
彼は今それを告白する。
「しかしだ。それが変わった」
「あの歌で」
「彼等は彼等で素晴らしい存在だ。その信仰もまら」
「では認められると」
「条件はあるがな」
ナブッコはここで付け加えてきた。
「条件とは」
「信仰だ」
彼はそれを示してきた。
「信仰とは?」
「我々は多くの神々を信じているな」
「はい」
「それに対して何もせず彼等だけの信仰に留まっているのならばよい」
それがナブッコの条件であった。
「他には何も求めぬ」
「寛大ですな」
「王は時として寛大にならなければならぬ」
王としての毅然とした言葉であった。
「だからこそだ」
「それでは今は」
「そうだ、寛容を示すべきなのだ」
ナブッコの王としての考えはこうであった。
「だがアビガイッレは」
「ええ」
御付きの者は暗い顔でそれに答えた。
「残念ですが」
「あの娘にはそれがないのだ」
悲しそうに首を振りそう述べた。
「あまりにも生真面目で厳し過ぎる。あれでは」
「王として足りないと」
「血筋も確かにある」
アビガイッレが奴隷の娘であること、これは消しようもないことであるのだ。
「しかしだ」
だがナブッコはここで言った。
「それでもな。私はそれを無視できたのだ」
「そうなのですか」
「そうだ、アビガイッレを次の王にと考えたこともある」
それを今告白した。心からの言葉であった。
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