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なりたくないけどチートな勇者
21*甘い誘惑
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由である。

彼は霊域を浄化するために親、親友、仲間達から自分の記憶を消して、彼がいた国からも自分の存在を抹消してからこの国へとやってきたのだ。
誰も悲しまないように、自分が大事にしていた人達の中から自分を消す、並大抵の覚悟では出来るはずも無い。
しかも、自分とは全く関係の無い国の関係の無い者達のために彼はそれをやってのけた。

さらに彼の国は、特別な方法を使ってしかいけない所にあるらしく、一度こちらにきたら二度と帰れないらしいのだ。


つまり、彼は家族や友、さらには国を捨ててまで見ず知らずの自分達を助けにきたのだ。

しかも彼はあくまで任務を遂行するのを休暇の間にやると聞かなかった。

理由は、“一人修業の旅”に出ると言えば誰も付いて来ないし巻き込まないですみますから、と彼はおどけながら言ったのだ。

そして、すぐには無理だが、今後しばらくして、いつか休暇が欲しくなったら届け出さえ出せばすぐに休暇をあたえる事を魔王は約束して、ナルミは部屋を後にした。

そして今、ナルミが退室後に余りに泣け過ぎて他の近衛隊と交代した(その時シルバは隠れていた)彼女達は兵士宿舎(女性用)の彼女達の部屋にいる。

「あ、あれが真の…ズッ…え、英雄のす、すがだなんですね…」

「全てを捨ててまで私達の国を護るために来たなんて…」

「……私は、あのお方のようになりたい。」

「わ、わだじはぜんぜーのこど、な、なにもわがっでなかっだでず…うぁーん!!」

中はもはや涙で埋め尽くされている。
なんとも涙脆い人達である。

そしてしばらく泣いた後、だんだん落ち着いてきたスフィーはシルバに聞いた。

「シルバ…あのお方はなぜ私たちのためにあそこまでしてしてくれるのだろうか……」

それに対してシルバは、いまだに呂律が回っていない口調で答える。

「わ、わかりま、ぜん…わだじは…なにもわがっでながっだんです……うわーん!!」

「落ち着いて、シルバさん。」

ふただび取り乱したシルバを隊長が優しく諭す。

「で、でもぉ…」

ぷるぷる震えながら泣いているシルバは、端からみたら虐められてるようである。

それからまた泣いていたシルバだが、しばらくしていきなり立ち上がった。
そして言ったのが

「私、聞いてきます。先生がなんのために私たちを護り戦ってくれるのか、その理由を今から聞いてきます。」

そう言い、決意した顔をしながら彼女はドアに手をかけ、扉をあけた。

そして部屋を出ようとした時にボーっと彼女の行動を見ていたスフィーがいきなり駆け出し、彼女を捕まえて扉を勢いよく閉めた。
襟首を掴まれたシルバはぐえっとなってその場で咳込んだ。

「ゴホッゴホッ……なにするんですか!」

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