1部分:第一幕その一
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は一体」
「あれだ」
彼は今来たばかりの道を指差す。するとそこには豊かな巻き毛の金髪にやや切れ長の美しい黒い瞳と鮮やかではっきりとした美貌を持つ少女がいた。豪奢な服が他の者とは違うということを教えていた。そこに静かに立っていた。
「フェネーナですか」
「そうだ、彼女だ」
ザッカーリアは自信に満ちた声で述べる。
「彼女がいる、王の娘だ」
「そうだ、我等にはまだ希望がある」
「我等は助かることができるのだ」
そのフェネーナを見て急に活気が出て来ていた。
「そうだ、彼女は我等にとっての喜びの日の太陽だ」
ザッカーリアはそこまで述べた。
「恐れることはないのだ。神の永遠の援けを信じよ」
「永遠の助けを」
「思い出すのだ」
ザッカーリアはかつての苦難を話した。
「あのエジプトでのことをだ」
「エジプトの!?」
「そうだ、エジプトでのことだ」
かってユダヤ人達はエジプトの勢力下にあった。そしてその圧政に苦しみモーゼに連れられて故郷へと戻ったのである。
その時モーゼは海を割りユダヤ人達を逃がし十戒を授かった。あまりにも有名な脱出である。
「そのことを忘れるな」
「それでは」
「そうだ、今もまた」
彼は言う。
「神は我等を救われる。よいな」
「はい」
「それでは」
人々は落ち着きを取り戻しだした。だがそこにまた嵐がやって来た。
「皆、大変だ!」
剣を手にし、鎧兜で武装した彫の深い顔立ちの精悍な若者がそこにやってきた。兜からのぞく髪は黒く、黒い瞳からは強い光を放っている。王の甥であり将軍でもあるイズマエーレである。彼は兵士達を連れて神殿にやって来たのである。息は荒くそれだけで只事でないのがわかる。
「将軍、どうされたのですか」
「一体何が」
「もうすぐ城壁が陥落する」
彼は同胞達にこう言った。
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