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剣の丘に花は咲く 
第七章 銀の降臨祭
幕間 傷跡 弍
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く。

「……何をだ」

 聞き返す士郎だが、本当のところは分かっていた。

「分かっているだろ……このままじゃ何時か死ぬぞお前」
「…………」

 士郎は反論しない。そう言われるのは初めてではなかった。

「今回も何か見返りがあったわけじゃない。怪我を治療するための金も、腹を満たすための食料も、欲を満たすための女も……何時も何時も無償で助けてるが……士郎、そろそろ考えを改めなけりゃ死ぬぞ……それも近いうちにな」
「…………」

 ヒサウは視線を合わせようとしない士郎を睨みつけながら語り。士郎はそれを黙って聞く。

「助けるものを選べと言っている」
「……ぁ」
「別に助けるなとは言っていない。そうだな……まずは人助けした後は何でもいいから報酬をもらえ」
「……だ」
「お前は何時も無償で人助けしているが、それが何時かお前の首を絞めるぞ。いいように使われて利用され……そして最後はポイッ……だ。だからな――」
「嫌だ」
「……なんて言った?」

 ヒサウの説教は続き、士郎は黙ってその説教を聞いているように見えた。しかし、時折小さく耳に入る声に気付いたヒサウが、話すのを止めると、士郎の否定の言葉を耳にした。
 士郎の否定の言葉にビキリと額に血管を浮かせると、ヒクつく笑みを浮かべながら聞き返す。

「嫌だと言ったんだ。ヒサウの言うことは分からないでもないが、助けを求められたら俺は絶対に――」

 士郎は先程黙り込んでいた分を取り戻すように話し始めたが、

「てい」

 ヒサウが懐から取り出したトカレフの銃把に殴られ強制終了された。

「ぎっ?!」

 濁った悲鳴を上げ頭を抑えた士郎を、ヒサウは腕を組んで見下ろす。

「何をっ!?」
「何を? じゃねえっ!! オレが言っていることぜってえ分かってねえだろ! このままじゃ死ぬって言ってんだよ!!」
「それで人が一人でも救えるのなら、俺はそれで構わな――」

 馬鹿なことを言う士郎をヒサウは怒鳴りつけた。しかし、士郎はそれでもとヒサウの言葉を否定する。
 だから、ヒサウは……。

「てい」

 再度黙らせるため今度はAKの銃把で頭を殴り付けた。

「ぐばっ?!」
「何がそれで構わないだっ! 目の前の一人を救うため、未来に救える百人を見捨てると言うのかお前はっ!! いいか士郎。お前との付き合いはまだ一月にも満たないが、それでもお前が馬鹿なほどお人好しで、死ぬまで人助けを続けるだろうってことが分かった。そんなお前が死んだら、お前が助けるはずだった人間まで殺すってことだぞ!!」
「っ……それでも……それでも俺はっ!!」

 AKの威力はトカレフ以上だったのか、士郎は地面の上を頭を抑えながらごろごろと転がり呻き声を上げていた。
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