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剣の丘に花は咲く 
第七章 銀の降臨祭
幕間 傷跡 弍
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郎が話した内容を頭の中で反芻していると、意識せず言葉が漏れる。士郎はそれを聞くと、苦笑を浮かべた。

「まあ、それを目指しているからな」
「は? 今なんて?」

 士郎が漏らした呟きを、聞き漏らすことがなかったヒサウは、小さくなりかけた焚き火にくべようとした姿のまま顔を上げた。

「正義の味方を目指しているって言ったんだ」
「ぶっ! あはははははははは……は、はは……。冗談じゃないようだな?」

 真剣な顔で言う士郎に、ヒサウの笑いが段々と小さくなり、遂には尻すぼみに消えていった。下がっていた目尻が上がり。笑とは違う理由で細まる目が、鋭く士郎を貫く。

「……悪いか」
「いや……悪くはない……ふ……ん……『正義の味方』ねぇ……」

 殺気が交じるほどの強い視線に曝されながらも、士郎の顔色は変わらない。ただ、少し先ほどと同じよにむくれ始めた士郎に、ヒサウの視線が弱まる。

「何だ?」
「いや……何も……」

 表情は変わらないが、何か眩しいものを見るかのように、更に目を細めたヒサウに、士郎が訝しげな視線を向ける。それに気付いたヒサウが小さく首を振る。
 パチパチと、薪が弾ける音だけが、二人のいる空間に響く。
 何処か落ち着かな空気に、士郎が何かを言おうとするが、

「なあ、それ、オレが手伝ってやろうか?」

 それよりも先に、ヒサウが口を開いた。

「え? 手伝うって、まさかマモルを探すのをか?」 
「ああそうだ。言っておくが別に情にほだされたって理由(わけ)じゃないぞ。こっちにもこっちの理由があってね」
「しかし……」
「この国は長い間続く内戦で情勢がものすごく不安定だ。何も知らないあんたが、そんなとこで一人で何か出来るか?」

 いきなりの提案に逡巡する士郎に、ヒサウが畳み掛けるように士郎の不利を説明を始めた。

「くっ……」
「で、どうする?」

 自分の今の現状を知り、圧されるように黙り込む士郎を、ヒサウがにやにや笑いながら見下ろす。
 にやにやと笑うヒサウを俯きながら見上げた士郎は、渋々と頷いて見せた。

「……お願いします」
「ふん……了解」

 大きく足を組み、頭を下げる士郎の後頭部を見下ろしながら、ヒサウは大きく頷いて見せた。













「シ〜ロ〜ウ〜ッッ!! あんた何考えてんだッ!!?」
「すまんすまんっ!! まさかあんなもの持っているとは思わなかったんだっ!!」
「思わなかったじゃねえんだよっ!! どうすんだよアレッ!?」

 ヒサウと士郎は爆撃で荒れ果てた街の中を全力で駆け抜けていた。
 必死な顔で士郎を罵るヒサウは、背後から響く重低音を指差す。

「戦車が出てくるなんて思わないだろ普通ッ!!」
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