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剣の丘に花は咲く 
第七章 銀の降臨祭
幕間 傷跡 弍
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「そ、それでも」
「……まだ村人の生き残りがいるかもしれない。ヒサウはその詮索を頼む」

 なおも言い募ろうとするヒサウに対し士郎は村人の生き残りの捜索を頼む。
 それが自分に士郎の後を追いかけさせないためのものだと、ヒサウには分かってはいたが、拒否することは出来なかった。

「っ……く……わ、わか……た」

 士郎の目を見てしまったから。
 縋るような。
 ……願うような。
 …………助けを乞うような……。
 酷く……弱々しい目を……。 













「……あんな目をされちゃ……断れねぇだろ」

 炎の向こう側に消えていった背中に向け小さく文句を言い捨てたヒサウは、火の手が収まり始め、炎の代わりに黒煙を上がりだす村の中を歩き出した。
 士郎と化物の戦いに目を奪われていたため気付かなかったが、あの化物の犠牲者と思われる者の死体があちらこちらに見える。どれもこれも目を背けたくなるような惨たらしい姿を晒していた。

「ひでぇな……あれが……食人鬼(グール)か」

 母親のことを調べている中で、所謂オカルトと呼ばれるものを知る機会があった。
 食人鬼(グール)だけではない……魔術師、死徒、吸血鬼……良くあるただのデマだと思っていた。
 だが、見てしまった。
 明らかに人ではないモノ。
 悪い夢の産物のような存在を……。

 そして……。

「士郎のアレも……もしかして」

 士郎の所持している武器については把握していた。その中にあんな剣の姿はなかったはずだ。
 そして、士郎のあの言い様。
 明らかにあの化物について知っていた。
 なら……。

「……そういうことか」

 士郎との旅の中で不思議に思ったことがあった。
 異常なほどの身体能力。
 銃や爆発物についての知識がないにも関わらず、時折見せる驚く程正確な爆弾や銃の構造把握や解体についての技術。
 他にも色々とあった。
 その理由が、自分の知らないナニかだとすれば……。

「……ま、関係ないか」

 例えそうだとしても。
 士郎が自分の知らないナニかだとしても関係ない。
 だって自分は嫌というほど知っている……。

 お人好しで。

 料理が上手くて。

 機械いじりが好きで。

 女慣れしてるようでそうでなくて。

 そして……何より……誰よりも優しい……。

「……士郎は士郎だ」


 











「……っ!!」

 悲鳴を押し殺したくぐもった声が、ヒサウの口から漏れる。
 村の中を一巡りしたが、生きているもの姿はなかった。煙に追われるように村から離れると、ヒサウの視界に大きな倉庫の姿が映った
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