第2話 東の蛇神とギフトゲームをするそうですよ?
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、じわりと動き始める。
その動きは、正に渦。
そして、美女の口元が弓のような弧を描き、それは、くっきりとした笑みの形を作り上げた。
そうして、
「二度と転生など出来ぬと覚悟するが良い。ずっと、妾の手元に置いてやるが故にな」
ゆっくりと、足元の方から霧に包まれて行く美女が、そう二人に対し……。いや、彼女は美月の事など初めから眼中にはない。それは、ハクに対しての言葉。
そう、ハクに対して語り掛けて来た。
その中に含まれていたのは、自らの勝利を信じて疑わない自信。
そして、愚かにも神に挑む少女に対しての嘲笑で有った。
「ひとつ」
美月が、最初の時を刻む。
ハクは、動こうとしない。そして、深い霧の向こう側で薄い影を残して立つ人影も動こうとはしなかった。
「ふたつ」
美月が再び時を刻む。
その声に合わせるようにゆっくりと伝わって来るのは微かな祝詞。
「みっつ」
人影だけを残して動こうとしなかった女性の周囲に、渦を巻きつつ有った霧が徐々に収束して行く。
いや、この霧はただの自然現象により起きる霧ではない。明らかに、あの白い女性。この川を支配する存在が顕われた事に因り発生した霧。
何故ならば、ハクが立って居る場所が、水汲み場の最先端。其処から先は川。水の領域。
そして、その水のみが支配する場所に、あの女性は何の揺れを示す事なく、真っ直ぐに、嫋やかに。そして、麗然として立ち続けていたのだ。
「よっつ」
ゆっくりと渦を巻き、集まって行く神力。その姿は……。
「いつつ」
白い。白く光るような大きな身体を持ち、
「むっつ」
紅く不気味な目を爛々と光らせる存在。
「ななつ」
白き大蛇とも、妖しい白い光の線とも付かない何モノかが、僅かに鎌首をもたげて、動こうとしないハクを睥睨していた。
いや、動こうとしないのではなく、動けないのか?
「やっつ」
そう。ゆっくりと鎌首をもたげて、紅く光るその瞳が、僅かに揺れている。
そのゆらゆらと揺らめくように動く様は、ある種の能力者の霊力にも似たゆるやかな動きを示し、
厚い霧に因って遮られた陽光が、輝く紅き瞳がハクを、そして、その後ろに立つ美月をも睨め付ける。
そう。見入る。いや、この場合は魅入るが正しい。
この姿、及び能力から推測して、この女性は蛇の精。そして、ハクはおろかにも、その蛇の精の聖域内で、魅入られない事を勝利条件とするゲームを挑んだと言う事。
蛇を示す巳と、魅が通じ、更に、蛇の動きに魅入られて動けなくなる獲物も少なくはない。
そう。俗に言う蛇に睨まれた蛙状態と思えば良い。
「ここのつ」
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