第2話 東の蛇神とギフトゲームをするそうですよ?
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木製の桶を持ち、ハクや美月たちの方に近付いて来ている最中で有ったのだ。
「この道を少し行った先に元々の水源と成って居た泉が有ったんだけど、魔王に大地の恵みを奪われた為に、其処の水も枯れて仕舞って」
それで、現在ではここから東に向かって少し歩いた先に有る川から水を汲んで来て居る。……と、美月はかなり翳のある雰囲気でそう続けた。
「子供達が水汲みを行って居るのですか?」
そんな美月に対して、ハクはそう聞いて来た。但し、その言葉の中には非難の色も、そして、水汲みと言う過酷な作業に従事させられる子供達への憐憫を感じさせる事もない。
ただ、疑問に思った事を、素直に問い掛けて来ただけ。そのような雰囲気をハクは発していたのだった。
いや、おそらくは、美月の態度や、言葉の中に含まれる陰の気をハクなりに感じ取り、これ以上、彼女を非難し、追い詰める事の無意味さに気付いた、と言う事なのでしょう。
「そう。この世界では、ゲームに参加出来ない……参加する能力を持たない人間は、例え子供で有ろうとも労働力を供すると言う決まりが有るの」
しかし、美月は問い掛けて来たハクの顔を見つめる事もなく、視線は過酷な労働に従事する幼いコミュニティの構成員たちに固定したまま、そう答えた。そして、当然のように彼女の言葉からは明らかな哀しみの色を感じる事が出来ました。
そう。それは、不甲斐無い自らを責める言葉。父も母も失った自分には、本来、このコミュニティを維持する事が出来ないのではないのか、と言う不安の色も同時に内包した哀しみの雰囲気が……。
但し、それは別に珍しい話ではない。古来、子供も貴重な労働力として働かされる事は珍しくもなく、更に、現代の地球世界に置いても、この美月がリーダーを務めるコミュニティと大差ない環境で暮らす子供達と言う物も多数存在している。
そう。このコミュニティや、世界が殊更、過酷な世界で有る、……と言う証拠には、この一場面を切り取っただけでは語る事が出来はしないと言う事。
そんな台詞を口にした美月と、二人でひとつの水を入れた桶を重そうに運ぶ子供達。そして、完全に精気の奪われた街を順番に瞳に映したハクが、ひとつ首肯いて見せる。
そして、その後、このコミュニティの幼すぎるリーダー美月に対して、
「その、元々の水源と成って居た泉と言う場所に案内して貰えますか?」
……と、話し掛けたのでした。
彼女の雰囲気。ポカポカとした春の日溜まりにこそ相応しい、長閑な微笑みをその表情に浮かべたままで。
ハクの召喚の儀式が行われた館から少し歩いた先。相変わらず、西からの魔風が強く吹き付ける精気を失った荒涼とした景色だけが存在する街。
その一角に立ち止まる二人。尚、足元に存在
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