第2話 東の蛇神とギフトゲームをするそうですよ?
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「ここは五年前まではこの辺りでも、結構、大きなコミュニティだったんだけどねぇ」
美月と名乗った金髪碧眼の少女が、少し話し辛そうにそう語ってから、そのシニオンに結い上げた長い金髪を翻して、ハクの視線と外界の妨げと成って居た自らの肢体を退けた。
その瞬間、むき出しの悪意が籠った魔風が、ハクと美月。そして、彼女らの足元に四本のしなやかな足で立つ、小さな少女の髪の毛を弄る。
そう。それは、悪意の籠った魔風。まるで、すべての生気を吹き飛ばすかのような、乾きと冷気の籠った西からの強風で有った。
そして、その結界に因って聖別された召喚の儀式の行われた建物から一歩、外界へと踏み出した先は……。
西から吹いて来る風が石造りの建物に容赦ない爪痕を示し、かつての其処には道が存在していたと思しき位置には、風に因り吹き寄せられて来た砂に深く埋もれ、元々、豊かな緑を示したで有ろう木々は完全に乾き切った無残な姿を晒す……。
其処はどう考えても、人間が住むには過酷過ぎる環境を示す土地で有った。
風に因り、白き足袋と紅い鼻緒の草履に護られた巫女服姿の少女たちの足元に吹き寄せられた木片がひとつ。
身を屈めたハクが、その木片を無造作に右手の指先で持ち上げようとした。しかし、その木片を持ち上げる事は叶わず、ボロボロと脆くも崩れ去って行く。
まるで、全ての生気が失われた世界。ここは、そう言う感想が相応しい場所で有った。
「土の気が非常に弱まり、金気のみが強く成って居ます。しかし、この金気は水を生じさせない金気故に、木気が育つ事が無く成った」
形の良い眉を潜ませて、ハクは小さく呟くようにそう言った。
屈んだ姿勢から立ち上がり、そして、その砂で覆われた大地をゆっくりと見渡した後に……。
「元々は豊かな土地やったんやけどな。数年前から急に植物の育たない、死んだ大地に成って仕舞ったんや」
美月に代わって、二人の足元に存在する白猫のタマがそう答える。
そう。彼女の言うように、確かに大地は死を示し、西からの風は明らかに穢れを運んで来ている。
しゃらん……。
そう感じた瞬間、巻き起こる魔風が彼女を飾る鈴を鳴らす。
そして、その風に因って長き黒髪を流したハクが、その視線をそれまでの風上……つまり、西へと向けていた視線を、東へと移した。
その仕草は至極自然な物。おそらく、風に因って巻き上げられた砂埃から、彼女はその瞳を避けたのでしょう。
しかし……。
しかし、そのハクの視線の先を見つめた美月が、その碧い瞳に哀しみの色を浮かべた。
そう。そのハクの見つめる先に存在して居たのは、村の入り口と思われる崩れかけた石製の門から、十人前後の子供達がそれぞれの小さな手に
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